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日本政府の「SDGs実施指針」改定を受けた市民社会の評価

最終更新: 4月22日


2019年12月20日、日本政府「SDGs推進本部」は、「持続可能な開発目標」(SDGs)に関する日本の国家戦略である「SDGs実施指針」を改定しました。一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)(東京都千代田区)は、この指針改定について、政策提言を積極的に行ってきました。この立場より、以下、改定された「SDGs実施指針」に関する市民社会としての評価と見解を示します。


評価全文(PDF)はこちらからダウンロード可能です。

SDGs実施指針改定はこちら

改定に向けて寄せられたパブリックコメント一覧はこちら

1. ジェンダー平等が優先課題の1番目に明記されたことを歓迎します。


今回の指針(以下、改定指針)では、「ジェンダー平等」が、政府が定める 8 つの「優先課題」のうちの一つとして、「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」という形で明記されました。また、「すべての課題への取組において主流化する必要のある分野横断的課題として取組を推進していく」として、取り組みの方向性も明示されました。さらに、「実施のための主要原則」の「(2)包摂性」の箇所においても、ジェンダー統計の充実を含むジェンダー主流化の重要性が明記されました。これは、改定指針の骨子案について政府が実施した「パブリック・コメント」募集に対して提出された 303 件のパブリック・コメントのうち、28%がジェンダー関連であったこと、また、SDGs ジャパンをはじめ、様々な団体や関係者などが、ジェンダーについて明記するように求めたことを反映したものです。私たちは、「ジェンダー平等」が優先課題の1番目に明記されたことを歓迎します。 


2. マルチ・ステークホルダー・プロセス及び地域との連携重視の視点が盛り込まれたことを評価します。


改定指針では、政府の役割に関する記述が一定、増大するとともに、円卓会議などを活用したマルチ・ステークホルダー・プロセスの強化がうたわれています。私たちは、この課題について、円卓会議の活用と共に、国連の「持続可能な開発」プロセスで様々な非国家主体の参画の仕組みとして位置づけられている「メジャー・グループその他のステークホルダー」(MGoS)のような仕組みを導入することも求めていました。本指針ではそこまでは入りませんでしたが、円卓会議を活用して様々な手法での「マルチ・ステークホルダー・プロセス」の実施に希望が持てる内容となっています。また、「主なステークホルダーの役割」において、SDGsにかかわるステークホルダーの役割が以前より詳細に規定され、その中で「市民社会」において、社会の中で取り残されがちな人々(当事者)の声を反映させることの重要性についても、一定、記述がなされました。私たちは、これについても歓迎します。


3. 旧「実施指針」につけられていた「付表」が「アクションプラン」に置き換えられたことに懸念を表明します。


旧「実施指針」には、SDGsにかかわる政府の各種施策が、数値目標なども含めた形で「付表」としてまとめられていましたが、改定指針では、これが、毎年6月および12月の推進本部会議で採択される「アクションプラン」に置き換えられました。現在の「アクションプラン」には、SDGsにかかわる各種施策の予算額等は書いてありますが、それぞれの施策が掲げる数値目標などは書かれていません。また、「バックキャスティング」については、その考え方を踏まえる、との記述がなされたことは評価できるものの、日本政府としてグローバル指標を尊重しながら「2030年目標」を定め、また、現状を政府自らが評価して、それを目標達成のための実施戦略にフィードバックする、といったことについては明記されませんでした。SDGs達成まで11年しかないところ、目標の設定と現状の評価、それを踏まえての戦略形成は不可欠です。私たちは、「付表」を単に既存の「アクションプラン」に置き換えるということであれば、これに強い懸念を表明します。 また、「アクションプラン」の在り方を変え、各課題の目標とその達成のための施策を示すことで、政府としてどのような成果を目指すのかを明示することを提案します。


4. 「バックキャスティング」手法の導入による大胆な変革を期待します。


「バックキャスティング」については、その考え方を踏まえる、との記述がなされたことは評価できるものの、日本政府としてグローバル指標を尊重しながら「2030 年目標」を定め、また、現状を政府自らが評価して、それを目標達成のための実施戦略にフィードバックする、といったことについては明記されませんでした。本年 9 月にニューヨークで開催された「国連 SDG サミット」の成果文書「SDG サミット政治宣言」では「飢餓、ジェンダー、格差、生物多様性、環境破壊、海洋プラスチックごみ、気候変動、災害リスクへの対応に遅れがみられる」との指摘がおこなわれ、厳しい危機意識と共に、2020-30 年の「行動の 10 年」が呼び掛けられました。改定指針の「ビジョン」で示されているように、日本が国内外に「先駆者」として「日本の『SDGs モデル』」を発信するのであれば、「誰一人取り残さない」という SDGs の理念を基本に、高いレベルの「2030 年目標」を掲げることが不可欠です。その達成のために、グローバル指標に基づく各ターゲットの現状と目標のギャップを分析して評価し、目標の実現に向けて資金を配分し、取り組みを進めていく「バックキャスティング」を大胆に取り入れていくことはさらに必要不可欠です。それは、国内のみならず、日本の SDGs 実践に注目する海外の関係者に対して、SDGs に関する日本の取り組みを「見える化」することにもつながります。


5. 「貧困の根絶と格差の是正」を、今後のSDGs実施関連施策で最重要項目とすること、さらに「防災・減災」および「地域の経済・社会の活性化と環境の持続可能性の確保」も明示することを期待します。


改定指針について私たちが最も残念に思うのは、「貧困の根絶と格差の是正」について、具体的な施策が書かれなかったことです。貧困の根絶と格差の是正は、SDGsの中でも最も重要な目標の一つです。また、ベルテルスマン財団/持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)とOECDの双方から日本の課題として指摘されている目標の1つが「ゴール10不平等」であることからも、格差の問題への取組は喫緊の課題です。私たちは、SDGsにおける貧困・格差の是正の重要性に鑑み、社会的排除と貧困の関連性を想起しつつ、今後、この分野にかかわる施策について、SDGsへの取り組みの重要項目とすることを求めます。また「仙台防災戦略」でも示された「防災・減災」と、「地域の経済・社会の活性化と環境の持続可能性の確保」も、重要な施策領域として位置づけることを期待します。



SDGsジャパンでは、他のすべてのステークホルダーとともに、SDGs達成に向けた具体的な行動を推進していきます。また、日本政府に対しては、他のステークホルダーと共にSDGs達成に向けて積極的な取り組みをより積極的・発展的に行うとともに、市民社会をはじめとするステークホルダーと、対話をベースとした協力・連携を積極的に進めていくことを期待します。


以上

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