HLPFサイドイベント:新型コロナ時代の科学技術イノベーションの在り方

国連SDGsハイレベル政治フォーラム(HLPF)で

新型コロナ時代の科学技術イノベーションの在り方に関するサイドイベントを共催


SDGsの進捗を評価し、今後の取り組みの方針を検討するために毎年7月に開催されている「国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」(HLPF)は、今年は7月7日から16日までの間、新型コロナの影響でヴァーチャルで開催されています。SDGs市民社会ネットワークは、二つのサイドイベントを共催しています。そのうちの一つが、(特活)APEXが主催した「持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク=ポスト・パンデミック社会における技術に関する全体的パースペクティブ」で、SDGsジャパンはJANICとフィリピンの「フィリピン農村復興運動」(PRRM)とともに企画を共催しました。


現在、情報通信、交通運輸、エネルギー、バイオといった分野で急速に進む科学技術イノベーションとSDGsとの関係は多義的です。市民社会は、SDGs達成に向けた科学技術イノベーションの積極的な価値を認識しています。一方で、科学技術イノベーションの実装により既に生じている貧困・格差の拡大や失業の増大、エネルギーや資源消費の拡大と環境破壊、政治・社会・文化への影響といった課題や、科学技術イノベーションが、それによって影響を受ける人々の主権に基づかず、グローバル資本の論理によって進められていることについて、危機感を抱いています。


昨年のG20大阪サミットに向けた市民社会の提言プロセスである「C20」(市民20)では、「デジタル経済タスクグループ」が設置され、科学技術イノベーションに関する市民の立場からの政策提言が行われました。一方、途上国における適正技術の普及に取り組む日本のNGO「APEX」(Asian People's Exchange)は昨年12月、持続可能な開発と科学技術に関する国際会議を開催し、「持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク」を採択しました。今回のサイドイベントは、3月以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延という新たな状況を踏まえつつ、世界の市民社会に向けて「適正な技術選択」という考え方を提起し、議論を巻き起こしていこう、という趣旨で開催されました。


イベントでは、まずAPEX代表の田中直氏がキーノート・スピーチを行い、このフレームワークの内容を説明しました。曰く、現代の課題は「貧困と格差」「環境と資源」「人間・労働の疎外」の3つの問題群からとらえられます。これらが相互に連関しながら、今日の世界を持続不能なものにしているわけです。このフレームワークでは、近代産業社会・近代文明の在り方にさかのぼって課題の根底的要因を見出したうえで、この3つの問題群に取り組み、緩和・解決するために、今後の技術の在り方を10の原則にまとめています。詳細は以下をご覧ください。

持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク  

http://www.apex-ngo.org/pdf/FrameworkJapanese.pdf

田中直氏のスピーチを受けて、フィリピンで貧困の解消と農村の開発に取り組む「フィリピン農村復興運動」(PRRM)のベッキー・マレー氏(貧困をなくすためのグローバル・コール(GCAP)共同議長)と、科学技術イノベーションに関する調査と提言に取り組む市民社会組織「浸食・技術・独占に対する行動グループ」(ETC Group)のエレニータ・ダニョ氏がコメントを行いました。マレー氏は、科学技術イノベーションが途上国の貧困や格差を拡大している現状について提起し、ダニョ氏は科学技術イノベーションに関するガバナンスの不在について提起しました。そのあと、SDGs市民社会ネットワークから政策顧問の稲場雅紀がコメントを行い、新型コロナの予防・診断・治療等の新規技術開発の国際的な枠組みについて解説、これらの技術が国際公共財として必要な人の手に届くように市民として取り組むこと、また、新型コロナの重症化をもたらす肺疾患や非感染性疾患に関して、大気汚染への取り組みや、グローバルな食品・飲料産業へのアドボカシーを含めた「食と農」および貿易に関する取り組みも必要であると提起しました。


SDGs達成に向けた科学技術の在り方については、市民社会として、さらに追求が必要な課題であり、このサイドイベントを皮切りに、より積極的に調査研究や政策提言などを行っていきたいと考えています。


このサイドイベントについては、以下のウェブサイトから閲覧できます。

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