持続可能な開発 官民動く 環境・経済・社会の国連目標SDGs 指針定着、認知度向上カギ


持続可能な開発 官民動く 環境・経済・社会の国連目標SDGs 指針定着、認知度向上カギ

2017/8/4付

日本経済新聞 朝刊

 国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs=Sustainable Development Goals)」に官民が関心を強めている。貧困の撲滅など社会的課題の解決や経済成長と環境保護を両立させる試みで、環境省が環境白書や環境基本計画への反映を推進。企業も製品の認定に取り組むなどし始めた。認知度を高めて、政府の政策や企業経営の指針として存在感を増せるかが焦点だ。

外務省はピコ太郎さん(右)を起用して「持続可能な開発目標(SDGs)」を宣伝する(7月12日)

 SDGsは2015年に国連が採択し、30年までに世界各国が達成を目指す。気候変動対策や再生可能エネルギーの普及、経済成長や貧困の解消など17の目標を掲げ、193の全ての国連加盟国が合意した。貧困や飢餓の解消などを掲げて国連が15年まで取り組んだミレニアム開発目標(MDGs)の後継に当たる。

 MDGsが目標達成のために途上国の経済成長に焦点を当てたのと異なり、SDGsは環境問題など日米欧のような先進国が抱える課題にも対応しているのが特徴だ。また、これまで別々に目標を掲げることが多かった環境と経済、社会の課題解決を同時に進めることを目指している。

「地球環境に限界」

 SDGsが登場した背景を、慶応義塾大学教授の蟹江憲史さんは「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書が地球温暖化の深刻さを指摘するなど、地球環境に限界があるとの認識が広がったことが大きい」と解説する。将来の地球環境への危機感が、経済成長を最優先する従来の発想から脱する後押しをした。

 掲げられた目標には「1人当たりの食料の廃棄を半減させる」など数値を伴うものもあるが、達成の義務や罰則は無い。ただ国連が各国の統計局からデータを集めて目標の達成状況を公表する仕組みになっている。どこの国が真剣に取り組み成果を残しているかがわかるので、地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定と同様に、取り組みが遅れる国は国内の有識者や非政府組織(NGO)、外国の政府などから批判を浴びる可能性が高くなる。

 MDGsに比べて環境保護の側面が強くなったこともあり、環境省はSDGsの政策への反映を積極的に進めている。6月にまとめた17年版の環境白書では第1部の第1章を丸ごと使って取り上げた。さらに17年度末にもまとめる第5次環境基本計画でも、考え方を大幅に取り入れる方向で議論を進めている。

 企業による経営への反映も始まった。住友化学は16年11月に、SDGsの17目標に貢献する製品や技術を社内で認定する制度を始め、第1弾として21製品を認定した。

 たとえば電気自動車などが積むリチウムイオン電池の容量を高めるのに不可欠なセパレーターと呼ぶ部材は、「再エネなどの導入」を掲げた目標7と「気候変動対策」を掲げた目標13に該当する。鶏や豚の排せつ物が含む窒素の量を減らす飼料添加物は「持続可能な生産消費」という目標12と目標13に貢献する。

ピコ太郎さんPR

 富士ゼロックスは目標12の「国際資源循環システム」という取り組みを進める。日中韓やタイなどアジアやオセアニアの7カ国・地域に複合機などを回収して分解、再利用する拠点を設置。部品を再使用するほか、鉄や銅、アルミなどの素材を再利用したり燃やして熱を取り出したりして、リサイクル率はほぼ100%を誇る。CSR部長の吉江則子さんは「取り組み全体で黒字化できている。経済や環境の一体化というSDGsの精神にもかなう」と話す。

 企業がSDGsを経営へ取り込む利点について蟹江さんは「途上国の課題解決につながるため、海外市場の開拓に役立つ」と話す。途上国の間でも世界銀行の融資や先進国の経済支援を受けることを目指し、既存の開発計画をSDGsに基づいて整理する動きが出始めたという。

 政府は16年に首相をトップに据えたSDGs推進本部を設置し、外務省はタレントのピコ太郎さんが出演するPR動画を公開するなど宣伝に取り組む。しかし存在感を発揮するには至っておらず、SDGsの定着や活用を進める基本法の制定や担当大臣を置くなど、踏み込んだ取り組みを求める声も出ている。

 取り組みが功を奏して「省エネ」や「クールビズ」などに続きSDGsが日本社会に定着し、社会に影響力を持つ理念に育つか、が問われる。

(草塩拓郎)


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