これでは正月を祝えない〜積極的平和を希求して~

一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク 共同代表理事 大橋正明

今年の正月、めでたい気分は早々に消え失せた。その理由は、元旦にイスラエル政府がガザで人道支援するNGOの活動許可を取り消し、続く3日には米国がベネズエラを攻撃しマドゥロ大統領を拘束・移送したからだ。

イスラエル政府は、攻撃下のパレスチナ自治区ガザで人道活動に従事してきた「日本国際ボランティアセンター(JVC)」、「パレスチナ子どものキャンペーン」、「国境なき医師団」(MSF)を含む国際NGO37団体の活動許可を元旦に取り消した。イスラエル政府は約一年前にも、国連パレスチナ難民救済事業機関 (UNRWA)の活動を同国内で禁止する法律を成立させている。

人口222万人のガザの2023年10月末以来の死者は約7万人、負傷者は約17万人だ。人口に対する死者の割合は3%、負傷者は8%、つまり住民の11%もが死傷している。現在の日本の人口に置き換えると、死者369万人、負傷者1355万人という大惨事だ。アジア太平洋戦争での日本の死者は310万人、1945年の推計人口の4.3%なので、それに匹敵する事態が僅か2年余りの間に生じていることになる。

国際NGOはガザで、野戦病院や初期医療センターの大半、緊急シェルターでの対応、水と衛生サービス、急性栄養不良の子どものための栄養安定センター、地雷対策活動などを運営・支援してきた。今回禁止されたNGOのこれまでの活動がなければ、ケガや病気、飢えなどで亡くなった人の数はもっと多かったであろう。これらのNGOが不在の今後を想うと、暗澹とした気持ちになる。

3日早暁に突如行われた米国によるベネズエラへの軍事攻撃とその大統領の拘束・米国への移送は、トランプ大統領が理由とする麻薬取引の疑いがあるとしても、決して許されることではない。これではロシアによるウクライナ侵攻を非難できないし、中国の台湾を睨む動きを止められない。つまりこれまでの国際秩序が根底から崩壊し、いくつかの強大国による帝国主義的支配が広まることになりかねない。

ちなみに米国による同様な他国への軍事攻撃とその政府トップの拘束は、1989年末から翌年初頭にかけて中米のパナマで麻薬取引を口実に行われ、支配者ノリエガ将軍を拘束し、その後ノリエガは刑務所で病死した。表向きの理由である麻薬取引を本気で無くすなら、米国の麻薬の消費や需要の取り締まりを最優先すべきではないか?

独裁政権下のベネズエラからは、政治的迫害や経済的困窮などにより人口の4分の1の約8百万人が国外に逃れており、数年前から大きな国際問題となっていた。一年前に就任したトランプ大統領が米国際開発局(USAID)を解体して以来、世界中で人道支援や開発援助の大幅な削減が続いている。例えばミャンマーから逃れバングラデシュのキャンプに暮らす115万人のロヒンギャ難民に毎月支給される一人当たりの食糧費は、昨年中途から半額の6ドルに削減された。

インドにも大よそ5万人の主にミャンマーから逃れた難民が、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に登録されている。この人たちの内、高齢者や障害者の世帯に対する毎月の手当も、昨年から予算削減を理由に支給されなくなった。

マレーシアでも19万人ほどの難民がUNHCRから認知され、さらに数万人がその認知を待っているが、この組織の人員が大幅に削減されたせいで、この認知作業がさらに遅滞して数年間も待たされ、その間は仕事も出来ず本人も周囲も困り果てている。

こうした人道支援の大幅削減を、日本で暮らす私たちはほとんど知らない。しかし「誰も取り残さない」ことをモットーにする私たちSDGs市民社会ネットワークにとっては、SDGsの達成から世界がますます遠のく非常事態である。

これまで営々と大切に築いてきた多国間主義や人道支援のシステムが音を立てて崩れていっている。そんな状況だからこそ、私たちは最も取り残されそうな人々の立場に立って、達成期限まで残り5年を切ったSDGsの達成のアドボカシーに今年も一層取り組んでいく必要がある。積極的平和の実現を求めて!

元記事(Wixサイト): https://www.sdgs-japan.net/single-post/20260107

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