国連「持続可能な開発目標報告2026」が発表

2026年7月7日、国連は「The Sustainable Development Goals Report 2026」(持続可能な開発目標レポート2026、以下「国連SDGsレポート2026」)を発表しました。

国連SDGsレポートは、最新の統計をもとに、2030アジェンダと17の持続可能な開発目標の世界的な進捗を国連が毎年まとめ発表している報告書です。

国連SDGsレポート2026によれば、この10年間で、安全な飲料水や衛生設備、電気、保健医療、インターネットへのアクセスは拡大しました。教育分野でも、初等・中等教育の修了率が上昇しています。また、妊産婦死亡率や5歳未満児死亡率も低下しています。

こうした成果が積み重ねられている一方で、2030年の達成に向けて順調に進んでいるターゲットの割合は減少しています。

成果が生まれているにもかかわらず、なぜ世界はSDGsの達成から遠ざかっているのでしょうか。

国連SDGsレポート2026は、開発援助の急減、途上国の債務負担、紛争の拡大、過去最高水準の軍事支出などを、SDGs達成を妨げる要因として挙げています。そこから浮かび上がるのは、課題が解決方法の不在にあるのではなく、平和と開発に十分な資金を振り向けられていない国際社会の政治的な選択にあるということです。

達成済みまたは順調に進むターゲットは15%

国連SDGsレポート2026によると、世界的な傾向を評価できる139のターゲットのうち、達成済みまたは2030年までの達成に向けて順調に進んでいるものは15%でした。中程度の進展がみられる21%と合わせると、良好な進展がみられるターゲットは36%となります。

2025年版では、達成済みまたは順調に進んでいるターゲットの割合は18%でした。単純な比較には注意が必要ですが、2030年までの達成が見込めるペースで進むターゲットの割合は減少しています。

多くの分野で前進はみられるものの、進展を大幅に加速しなければ、2030年までの達成は困難です。

なお、国連は、新しい統計の追加や算定方法の改定があるため、各年の結果を単純に比較する際には注意が必要としています。

「変化は可能」

国連SDGsレポート2026では、

・HIVの新規感染は2015年から30%、エイズ関連死は35%減少した

・59か国では、「顧みられない熱帯病」と総称される病気のうち、少なくとも一つが公衆衛生上の問題とならない水準まで減少した

・さらに、134か国が5歳未満児死亡率に関するターゲットを達成した

など、各国の政策や国際協力が具体的な成果につながった事例も示されています。

2015年から2024年の災害関連死亡率は、2005年から2014年と比べて約65%低下しました。一方、人口当たりの被災者数は2倍以上に増えており、被害そのものが縮小しているわけではありません。

海洋分野では、各国の管轄権を越える海域の生物多様性を保全する国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)が2026年1月に発効しました。保護・保全されている海域も、2026年4月に世界の海洋の10%を超えています。

こうした成果は、政治的意思、投資、適切な政策、技術、国際協力が組み合わされれば、変化を実現できることを示しています。報告書からは、課題が解決策の不在にあるのではなく、成果を上げてきた政策や取組を、十分な投資と政治的意思によって必要な規模へ広げられていないことにあると読み取れます。

開発資金の後退

SDGs達成に向けた前進を妨げる大きな要因の一つが、政府開発援助(ODA)の急減と途上国の債務負担です。

2025年のODAは前年比23.1%減の1743億ドルとなり、単年では過去最大の減少を記録しました。金額は2015年と同程度の水準に戻っています。

一方、途上国ではSDGs達成に必要な資金が年間約4兆ドル不足しています。低・中所得国の対外債務総額は過去最高の8.9兆ドルに達し、3年連続で債務返済額が新たに流入する資金を上回りました。

ODAの削減や債務負担の増大は、単なる数字ではありません。保健、教育、食料、人道支援、男女平等、気候変動対策など、最も脆弱な状況に置かれた人々の生活に直接影響します。

平和はすべてのSDGsの前提

国連SDGsレポート2026と6月に公表されたSDSN「持続可能な開発報告書2026」がともに強く示しているのが、平和とSDGsの関係です。

紛争は、人命を奪い、人々を故郷から追い出すだけではありません。食料、燃料、肥料、海上輸送、物価、教育、保健、雇用などに影響し、長い時間をかけて築いてきた開発成果を短期間で失わせます。

平和と持続可能な開発を考えるとき、紛争の有無だけでなく、人権が守られているかという視点も欠かせません。国連SDGsレポート2026は、女性に対する暴力、障害のある人々が直面する差別、難民の増加など、世界全体の平均的な進展だけでは捉えにくい課題も示しています。SDGsの進捗を確認する際には、全体的な傾向だけでなく、どのような人々が、どのような状況で取り残されているのかを見る必要があります。

平和は、目標16に限られた課題ではありません。平和を失えば、貧困、飢餓、保健、教育、男女平等、気候変動など、すべての目標が後退します。平和と人権は、持続可能な開発の一分野ではなく、その土台です。

途上国でSDGs達成に必要な資金が年間約4兆ドル不足する一方、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、世界の軍事費は過去10年間(2016年から2025年)で41%増加し、2025年には過去最高の2兆8,870億ドルに達しました。国連SDGsレポート2026では、アントニオ・グテレス国連事務総長が、制御不能な軍事支出を抑え、平和と開発のための制度や取組に投資するよう呼びかけています。

残された4年をどう使うか

SDGsの達成期限まで、残り4年5か月となり、ポストSDGsに関する議論も始まりつつあります。

SDGsジャパンは「行動計画2026-2030」において、ポストSDGsの動向を見据えながらも、活動の主軸を2030年までのSDGs達成に向けた成果の実現に置いています。

貧困、格差、気候変動、平和、人権などの課題は、2030年を迎えればなくなるものではありませんし、誰一人取り残さない社会を実現するというSDGsの理念は、2030年以降も引き継がれなければなりません。SDGsによって築かれた国内実施体制や進捗を確認する仕組み、多様な主体が参加する枠組みも、その先へつなげていく必要があります。

達成が危ぶまれる今こそ、SDGsの理念に立ち返る必要があります。SDGsにどこまで誠実に向き合い、約束を実行に移せるかが、次の国際的な枠組みへの信頼を左右します。

残された期間に何を優先し、どこに資金を振り向けるのか。成果を生み出す方法がありながら、それを十分な規模で実施するための資金と政治的意思が不足しているという現実にどう向き合うのか。

まずは、現在続いている紛争を止め、平和を実現するために声を上げることが求められます。そのうえで、多国間主義への信頼と連帯を取り戻し、平和と人権を土台として、持続不可能な社会の仕組みを変革できるのかが問われています。

SDGsジャパンは、これからも、誰一人取り残さない社会の実現を諦めることなく、国内外の市民社会と連携し、現場の声を政策に届けながら、2030年までのSDGs達成に向けた取組と、その先の持続可能な社会に向けて、活動を続けていきます。

関連資料

国連「持続可能な開発目標レポート2026」

https://unstats.un.org/sdgs/report/2026/

国連SDGsレポートに対するSDGsジャパンの発表

20242025

SDSN 持続可能な開発報告書2026へのSDGsジャパンのコメント

202420252026

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