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国連「SDGsレポート2025」発表 SDGsの2030年達成に向けて今こそ最高速度に加速

更新日:8月14日

2025年7月14日、国連は「持続可能な開発目標報告書(以下、「SDGsレポート2025」)」を発表しました。


国連 「SDGsレポート2025」表紙
国連 「SDGsレポート2025」表紙

持続可能な開発のための2030アジェンダ(以下、SDGs)の採択から10年。達成期限である2030年まで、残すところ5年5か月となった今、国連の「SDGsレポート2025」は「現状の評価」だけでなく、「これからをどう変えるか」を問いかけるものとなりました。


「SDGsレポート2025」で示されたSDGsの進捗は、169あるターゲットの35%に進展が見られる一方で、48%の進展が不十分(31%がわずかな進展、17%は停滞)であり、18%のターゲットが2015年の基準値を下回る水準まで後退しています。気候危機の悪化、紛争の激化、格差の拡大といった複合的な要因が進捗を妨げており、国連はSDGsの10年間の成果は確かだが、依然として脆弱で不平等なままであるとしています。


8億人以上が極度の貧困に直面し、11億人以上がスラムや法的権利のない住居に暮らし、1億2千万人が強制移動を強いられています。さらに、二酸化炭素濃度は200万年以上で最も高く、2024年は1.5°Cの閾値を超え、記録上最も暑い年となりました。とりわけ深刻な問題が、SDGs進捗のための資金問題です。開発途上国ではSDGsの資金調達において年間4兆ドルもの資金不足が生じている他、低・中所得国(LMICs)は2023年には総額1.4兆ドルもの債務返済を行いました。多くの国が、前に進みたくても進めない現実に置かれています。


一方で、この10年間には確実な前進もありました。1億人を超える子どもと若者が教育の機会を得て、妊産婦や乳幼児の死亡率は改善。安全な水や電気、インターネットへのアクセスも拡大しました。新たなHIV感染者数は2010年以降で約40%減少しています。


「SDGsレポート2025」では、これらの現状を踏まえて、今後5年間で加速すべき6つの変革のポイントとして、1)食糧システム、2)エネルギー、3)デジタル接続、4)教育、5)雇用・社会保障、6)気候変動と生物多様性を挙げています。これらはSDGs全体に波及効果をもたらすものとして位置づけられており、これらへの政策転換と投資の集中が求められています。


また、「SDGsレポート2025」では、multilateralism(多国間主義)の重要性が繰り返し強調されています。分断と対立が深まる今、国家間の協調と国際的なルールに基づく連携こそが、持続可能な未来を切り拓く道であるという強いメッセージが示されています。




SDGsジャパンは、本年の日本政府による自発的国家レビュー(VNR)に先立ち、「SDGsスポットライトレポート2025」を作成しました。また、政府との対話や提言を継続的に行い、政府主催のマルチステークホルダー会議にも協力・参加するなど、多様なステークホルダーとの対話にも力を注いできました。さらに、7月にニューヨークの国連本部で開催されたハイレベル政治フォーラム(HLPF)には、SDGsジャパンをはじめとした市民社会メンバー11名(ユース含む)が参加し、日本政府のVNR発表に対して現地会場からも市民社会の声を届けました。


「SDGsレポート2025」は、「SDGs達成まで残り5年しかない。今こそ、最高速度への加速を。」というグテーレス国連事務総長の呼びかけで締めくくられています。残された5年でSDGsを達成し、その進捗を最大限に加速するためには、日本政府をはじめ各国政府が責任を果たすとともに、さまざまなステークホルダーが連携し、分野ごとの取り組みにとどまらず、分野横断的な行動を進めていくことが不可欠です。


SDGsが採択されて10周年を迎える今年は、第二次世界大戦終結と国連創設から80年という節目でもあります。しかし、世界は環境・経済・社会のあらゆる面で複合的な危機に直面し、その基盤である平和すら脅かされています。今こそ、武力紛争や暴力のない、平和で公正かつ豊かな未来を誰一人取り残さずに築くため、「信頼と連帯」を育み、希望の光を見出していくことが求められています。

引き続きみなさまと共に、誰一人取り残さないSDGsの達成に向けて、市民社会も最高速度に切り替えて、活動を続けてまいります。


SDGs市民社会ネットワークは、誰ひとり取り残さずに持続可能な未来をつくるために、引き続き皆様と一緒に知恵を出し共に歩んでまいります。



SDGsジャパン 政策提言・事業コーディネーター

松野有希


SDGsへの理解を深めるヒントがたくさんのSDGsジャパンのYouTubeチャンネル!
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プチコラム 4兆ドルってどれくらい??


4兆ドルがどれほど巨大なものなのか、具体的に見ていきましょう。まず、4兆ドルを日本円に換算すると、約593兆円となります。

この金額は、国際通貨基金(IMF)が発表した2025年のGDPランキングで5位に位置している日本のGDP(約596兆円)と大差ないことがわかります。日本の2025年度国家予算は約115兆円で、4兆ドルはその約5.1倍に相当します。


次に、開発途上国の経済規模と比べてみます。例えば、アフガニスタンの2025年推定国内総生産(GDP)は約2兆円、ハイチは約3兆円です。4兆ドル(約593兆円)は、アフガニスタンのGDPの約233倍、ハイチのGDPの約159倍となります。


さらに、イーロン・マスクという世界一の富豪の資産と比較してみましょう。現在、イーロン・マスクは約61兆円の資産を持っています。それでも、4兆ドルはイーロン・マスクの資産の9倍以上に相当します。


最後に、4兆ドルを地球上の全人口(約80億人)で均等に分けた場合、1人当たり約200ドル(約2万9,000円)、日本の人口(約1.24億人)で均等に分けた場合、1人当たり約3万ドル(約478万円)に相当します。この数字からも、4兆ドルという金額がいかに大きいものであるかがわかります。


SDGsジャパン インターン A.Y



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