2017/12/14 Informal Dialogue between UN Secretary-General and Japanese Civil Society


アントニオ・グテーレス国連事務総長と日本の市民社会との非公式対話(2017年12月14日)

2017年12月に都内で開催された「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)フォーラム」への出席のために訪日したグテーレス国連事務総長は、SDGs市民社会ネットワークに加盟する日本の市民社会組織(CSOs)との対話を行った。以下は非公式意見交換の要約である。

グテーレス国連事務総長による挨拶

グテーレス国連事務総長は、ドイツの政治哲学者ハーバーマスの「民主主義の中心は市民社会と政治社会の永続的な対話の積み重ねである」という言葉の引用から始め、市民社会の重要性を強調した。対話の積み重ねは政治的決定に影響を及ぼし、よって社会はただ政治家を選択するのではなく、永続的に政治家の行動に影響を与える。だからこそ、現代民主主義にとって、あらゆる公的課題に関して市民社会との議論が重要な意味を持つ。

グローバリゼーションが大半の人々の生活状況を改善することで民主主義と技術革新の発展に貢献する一方で、置き去りにされる人々もいる。現代社会は、途上国だけではなく先進国においても貧困層を生み出している。持続可能な開発目標(SDGs)は、私たちが現在そして次世代に向けてより公正で包摂的なグローバル社会を構築するために大変重要になっている。私たちが国内政策と国際協力の両方でSDGsにコミットするのは、そのためだ。

事務総長は日本政府が国内外でSDGsに強くコミットしていることを高く評価していると発言した。さらに事務総長は、日本政府が国内の貧困をなくしSDGsに関連する多くの課題に対応するために、経済・社会開発に関する国内政策を再構築することについて、そして国外での開発協力が2030アジェンダと同調するように、日本政府と協議したと述べた。

UHCはその意味では非常に重要である。これまで、HIVエイズ、マラリアといった特定の感染症への国際支援は、途上国の国内の保健システムの強化とは無関係に推進されてきたきらいがある。国内の制度整備に直接働きかけるような国際支援が求められている。

この点について事務総長はUHCに対する日本政府の29億ドルの拠出の表明は非常に重要であると述べた。事務総長はSDGs全般およびとりわけUHCの実現に向けて国際社会が何をすべきかという点についての意見やアイデアが市民社会から生まれてくることへの期待を示した。

参加者によるUHCについての意見

グテーレス国連事務総長のコメントを受けて、日本からの市民社会関係者はUHCフォーラム2017への事務総長の参加を国連のUHCへの強いコミットへの表れとして歓迎すると述べた。その上で、参加者からUHC推進、特に「誰一人取り残さない」という観点から行っている保健分野の市民社会の活動についての紹介があった。ある参加者は、UHC含めSDGs全般において、適切なデータに基づくSDGsの進捗状況のチェックの重要性を指摘した。これは最貧困層および最も周辺化された人々に対する説明責任を果たすために必要不可欠である。

グテーレス国連事務総長による回答

事務総長は、市民社会が政治決定における国内討論の場や、政策実施におけるモニタリングシステムに参加する重要性を指摘した。これは異なる国で異なるやり方で行われることであるが、市民社会も含む多様なセクターが参加する仕組みが制度化されていることが、政策形成や実施について戦略性をもった議論を可能にするだけでなく、説明責任確保のメカニズムを保障することにもなる。

事務総長は、多くの市民社会組織が国連経済社会理事会(ECOSOC)に登録し、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)に参加するよう奨励した。それにより、市民社会は、より効果的に政治プロセスに参加することができる。現在、各国はSDGsの進捗について自発的に評価するにとどまっており、実質的な議論が行われているとはいえない。HLPFをより効果的な枠組みにするには、市民社会の参加を強化する必要がある。

日本の市民社会から、地域における課題や障害者に関する意見について

日本の市民社会からの参加者一人は、ユース世代が日本の保健課題について政治やアドボカシーにおいて参加する必要性を、とりわけ都市圏以外の地域における参加の重要性を指摘した。遠隔地に暮らす高齢者がいかに医療保健サービスにアクセスできるのか、交通の確保も含めコメントが出された。高齢化が進む日本社会は、他国の高齢化社会対策へのモデルとなるべき状況にあることも指摘された。

SDGsの枠組みにおいて、障害者は支援が必要とされる周辺化された存在として認識されがちである。しかし、障害をもった人は、保健分野における権利ベースのケアの仕組み、費用対効果の高い援助器具、ユニバーサル・デザインの衛生設備の構築など、健康で包摂的、障害者にやさしい地域社会を作るという点で、SDGs達成のための大きな貢献者たりうるということを意識すべきだと指摘された。

グテーレス国連事務総長からのコメント

事務総長はユースの参加の重要性を指摘した。ユースとのコミュニケーション、若者のエンパワーメントおよび意思決定プロセスへのユース層の参加は、いずれも重要だが、それらを機能させていくのは容易ではない。ユース世代の課題を、ユースを理解することなしに議論してしまっている現状が昨今見られる。若者が議論及び意思決定プロセスへ参画できるメカニズムつくりが重要だと指摘された。

さらに事務総長は、医療システムのサービスの質が都市部と地域で格差があることを指摘した。遠隔地で技術のある医師を確保することは困難であり、地域の医療機関従事者が都会と同じ条件で勤務することは難しい。社会の脆弱層のニーズに答えることの重要性は、それゆえにこそ高いといえるだろう。

障害者については、 社会にフルに統合されている障害者は、社会のあらゆる構成員に対して大きな元気の素となる、ということを理解することが重要だ。普通考えられているのとは異なり、障害をもつ者ともたない者が、ウィンウィンの関係を作ることはできるのだ。にもかかわらず、多くの社会で障害者は取り残され、迫害され、差別されている。そのことは大きな問題だ。

性的指向、ジェンダー平等、人権に関する日本の市民社会からの意見

日本の市民社会からの参加者の中から、LGBTIなどマイノリティの人権を無視してはならないことが指摘された。日本の市民社会はとても保守的であり、家庭、学校、職場での差別が生じている。性的指向や性自認(ジェンダー・アイデンティティ)を理由とする差別や嫌がらせ(ハラスメント)をなくそうという国連主導の意識啓発の動きは、非常に重要である。同時に、性と生殖に関する保健(セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス)に関する情報とサービスに完全にアクセスすることは、女性や青少年、少女のエンパワーメントの促進に必須である、との指摘が別の参加者からなされた。

グテーレス国連事務総長のコメント

事務総長はいかなる性的指向を表明しても差別がないようにする人権擁護は重要であるが、これには国連加盟国の中でも否定的意見があると指摘した。また、ジェンダー平等の達成のためには女性のエンパワーメントが不可欠であるし、性と生殖に関する権利も欠かすべきではないと述べた。

事務総長は、民主主義が現在試練に立たされており、シビック・スペースの確保が重要だと指摘した。私たちすべてが人権課題に取り組む必要性が改めて強調された。

Informal Dialogue between Mr. António Guterres, UN Secretary-General, and Japanese Civil Society (Tokyo, December 14, 2017)

During his official visit to Japan in December 2017 to attend the UHC (Universal Health Coverage) Forum, Mr. Guterres met with Japanese civil society organizations (CSOs) affiliated with Japan Civil Society Network on SDGs (SDGs Japan). Below follows a summary of the informal exchange.

Opening remarks by Mr. Guterres