3/26「コロナ時代のSDGs」持続可能な社会の実現に向けた声明

3月26日、一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)は、「コロナ時代のSDGs 持続可能な社会の実現に向けて」を発表。コロナ時代の誰一人取り残さない社会変革の重要性を提案しました。


SDGsジャパンは、2020年度に発表してきた4回の声明を通し一貫して「SDGsを軸にしたコロナ対応」を提言してきました。コロナ下の社会では、保健医療への緊急対策、社会保障、教育や雇用機会の保障、行政のガバナンスや透明性、そして貧困・格差の是正への取り組みなど、SDGsすべての目標において課題が顕在化しています。なかでも女性への影響は深刻です。


私たちはSDGs達成期限である2030年を見据え、中長期的な社会の変革にも取り組む必要があります。今回の声明では、統合的で不可分な三側面とされる「経済・社会・環境」から、コロナ下の今、持続可能な社会を実現するために必要な視点を提案しています。


日本語声明文(PDF)のダウンロードこちらから

English version is coming soon

「コロナ時代のSDGs」

持続可能な社会の実現に向けて


一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク

共同代表理事 大橋正明・三輪敦子


「誰一人取り残すことなく、貧困や不平等のない持続可能な社会へ世界を変革する」

これは、2015年に国連で採択された世界の指針「持続可能な開発目標」(SDGs)の根底にある理念です。私たち一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)は、多様な当事者を含む市民社会の視点からSDGsの達成を目指しています。


SDGsは社会課題の解決策を指し示すものではなく、持続可能で誰一人取り残さない社会の実現のために私たちが達成すべき具体的な目標のリストです。SDGsを今の社会の持続不可能性に照らし合わせ、現在の施策や制度を変革しそれを実践していくためには、すべての人による行動が必要です。


SDGsジャパンは、2020年度に発表してきた4回の声明を通し一貫して「SDGsを軸にしたコロナ対応」を提言してきました。コロナ下の社会では、保健医療への緊急対策、社会保障、教育や雇用機会の保障、行政のガバナンスや透明性、そして貧困・格差の是正への取り組みなど、SDGsすべての目標において課題が顕在化しています。なかでも女性への影響は深刻です。


SDGsジャパンが発表したコロナ声明(2020年)


同時に、私たちはSDGs達成期限である2030年を見据え、中長期的な社会の変革にも取り組む必要があります。今回の声明では、統合的で不可分な三側面とされる「経済・社会・環境」から、コロナ下の今、持続可能な社会を実現するために必要な視点を提案します。


1. 経済

私たちの目指す社会像を経済発展の先に定めることが社会の変革に必要であり、またその変革には市民社会を含めた多様なステークホルダーの参画が欠かせません。


例えば「Society 5.0」を提唱する「科学技術基本計画」(内閣府)の第6期策定に向けた答申の素案では、目指す社会を「持続可能性と強靭性を備え‥(中略)‥、一人ひとりが多様な幸せを実現できる社会」とし、それは「SDGsとも軌を一にする」と述べています。また2019年に発表された「人間中心のAI社会原則」(内閣府)は「人間の尊厳が尊重され、多様性を内包した持続可能な社会」を掲げています。そのような社会を実現するには、多様性の理解を前提にした、市民社会を始めとするステークホルダーに開かれた包摂的な政策立案と実施のプロセスが必要不可欠です。


また、目指す社会への達成度を如何に評価するかも重要です。例えば、国際指標では経済活動以外の要素も取り入れ、生活実態や社会発展の度合いを評価しています。国連開発計画の「人間開発指数:HDI」やOECDの「より良い生活指数:BLI」では「教育を受けた年数」や「社会的つながり」なども指標としており、目指す社会に即した評価項目の策定が進んでいます。2018年のデータを基にしたBLIは、日本の14%の人は3ヶ月間収入がない場合に相対的貧困に陥るとしており、コロナなどの緊急事態に多くの人が貧困に陥るリスクを提起していました。SDGsグローバル指標はもちろんのこと、社会をより良く理解するために新たに開発された指標やデータも活用して現状の課題を把握することにより、SDGs達成に効果的な施策を策定することが重要です。


経済活動に関するガイドラインが国内外で策定されています。国内では2020年10月に、市民社会や企業、労働組合なども策定プロセスに参画した「ビジネスと人権国別行動計画」が政府によって発表されました。これは、国家には「企業による人権侵害から個人を保護する義務」を、企業には「事業活動において人権を尊重する責任」を求め、人権侵害に対しては救済へのアクセスを保障するものです。人権侵害には例えば長時間労働や外国人就労者に関する労働環境の格差、消費者のプライバシーの権利の侵害などがあり、コロナ下で顕在化したジェンダー不平等による雇用不安の課題も含まれます。SDGsジャパンはビジネスと人権市民社会プラットフォームに加盟する他の団体と共に、この行動計画が社会で実行されるよう尽力していきます。


国際的にはISO26000(社会的責任)やISO20400(持続可能な調達)といったガイダンス規格が発行されています。日本でも農畜水産物や木材産業の認証制度の評価指標として環境保全や品質保障に加え、労働者の人権順守や地域の雇用創出の視点も採用することで、経済活動の基盤となる地域社会の持続可能性を評価する動きが広がっています。


 2. 社会

コロナ下では、テレワークや休校措置等、対面コミュニケーションの機会の減少による社会的孤立が課題となっており、傾聴活動や食料支援を通した直接支援の重要性が増しています。市民社会団体による直接支援の活動が保障されるよう、地域社会の理解を深めると同時に自治体による支援も求められています。


各セクターが連携して地域づくりに取り組むためのロードマップとして、「地域SDGs指標」の策定が進んでいます。策定過程には、行政機関、住民、企業、研究機関など地域の実態を知る関係者が参加し、持続可能性に基づいたコロナ対策の議論もなされています。SDGsジャパンの会員団体も「地域SDGs指標」の策定プロジェクトを進めています。


SDGsの達成には、情報アクセスの貧困や教育機会の格差・不平等といった経済面以外の課題解決も必要であり、それらが経済的な貧困の連鎖を断ち切る鍵となります。情報の貧困・格差については、例えばコロナ下の緊急対策として支給されている給付金が、必要とする人々に確実に届いているのかを検証する必要があります。視覚や聴覚に障害があったり日本語を母語としない人々など、公的な情報にアクセスしづらい人々ほど支援を必要としている現状があります。「最も遠くにいる人々を最初に」とするSDGsの理念に基づき、社会保障の充実と同時に、それを享受するための手段の確保も重要です。


3. 環境

2020年、政府は2050年カーボンニュートラル宣言を行い、また国内で2050年二酸化炭素排出実質ゼロを宣言した自治体の数は全国の総数の18%を超える330に達しました(2021年3月24日)。また国際的には、世界の温室効果ガス排出量の51%を占める126か国が排出実質ゼロの目標を表明または計画しています(国連環境計画「排出ギャップ報告書2020」)。


気候危機による社会への負の影響は、地理的特徴や産業の構造、またはジェンダー、年代や生活スタイルといった個人の属性によっても度合いが異なっており、脆弱な立場におかれた人々への支援こそ重視されるべきです。例えば、気候災害では女性への被害が大きくなることが指摘されています。2020年12月に発表された「第5次男女共同参画基本計画」では、環境問題への対応において、政策の決定過程や具体的取り組みに男女共同参画の視点を反映させることが記されています。


環境と密接に関わる農林水産業でも持続可能性への取り組みが重要です。農林水産省の「2020年農林業センサス」(概算値)によると、農林業の経営体の数は前回調査(2015年)に比べて21.9%減少し、また農業経営体の96.4%を占める個人経営体では、従事者の69.5%が65歳以上となっています。国際的には、国連が掲げる「家族農業の10年」(〜2028年)が文化の継承、生物多様性の保全、貧困の根絶などを目指して家族農業に関する施策を進めており、また、2010年に採択された国際パートナーシップ「SATOYAMAイニシアティブ」では生物資源の持続可能な利用や管理を通した自然共生社会の実現を目指しています。


新型コロナウイルス感染症のような人獣共通感染症のリスクは、環境の悪化と生物多様性の破壊によって高まるとされています。生物多様性条約の愛知目標は、目標年であった2020年に、世界レベルで十分に達成された目標はひとつもないと結論付けられました。気候危機対策との相乗効果を最大化にしながら、次期の生物多様性国際枠組みで実効性のある内容に合意し、その確実な実施が重要になります。

持続可能な社会への変革に向けたこれらの潮流の中で、経済・社会・環境の相互関係の下で、すべての人による行動変容が一層求められています。


また、2021年度に予定されるエネルギー基本計画や自殺総合対策大綱といった各基本計画の見直しに際し、多様なステークホルダーの参加を保障することが重要です。


SDGsジャパンは「誰一人取り残されない」社会の実現を目指し、今こそ「SDGsを軸にしたコロナ対策」の重要性を提案します。今後も、市民社会の活動に根ざした社会の変革について、その取り組みと成果を発信していきます。






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