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10/21「コロナ時代のSDGs」レジリエントな社会に向けた声明

SDGsジャパンは、10月21日に新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)対策に対する新たな声明を発表しました。

本声明は、コロナ時代に求められる社会の変革に対する市民社会の実践について、具体的な事例を発信するシリーズの第一弾となります。第一弾では、「レジリエントな社会」をテーマに、社会・経済・環境にまたがる複合的な危機に対処するきっかけとなる実践例を紹介します。

SDGsジャパンは「誰一人取り残されない」社会の実現を目指し、今こそ「SDGsを軸にした対策」の重要性を提起します。

日本語声明文(PDF)のダウンロードはこちらから

You can download English version from here(PDF)

 

コロナ時代のSDGs

「レジリエントな社会」に向けた市民社会の実践

一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク

共同代表理事 大橋正明・三輪敦子

「誰一人取り残すことなく、貧困のない持続可能な社会へ世界を変革する」

これは、2015年に国連で採択された世界の指針「持続可能な開発目標」(SDGs)の根底にある理念です。一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)は、多様な当事者を含む市民社会の視点からSDGsの達成を目指しています。社会を一変させたパンデミックや、社会・経済・環境の複合的で緊急の課題を抱える今こそ、「SDGsを軸にした対策」が社会の変革に必要です。

1. レジリエントな社会

レジリエンス(resilience)は「回復力」、「耐性」もしくは「しなやかな強さ」と訳されます。「レジリエントな社会」とはパンデミックや災害の状況下でも社会が停滞しにくく、短期間での回復・復興が可能な社会を指します。しかし、現状では社会制度が十分ではないため、支援や保障の行き届いていない人々が多数います。困窮する人々への支援と、レジリエンス向上のための制度改善の両方に同時に取り組むことが求められています。以下に、市民社会が携わったそれらの実践例を紹介します。

2. 市民社会が関わる実践例

脆弱性(Vulnerability):パンデミックや災害で被害を大きく受ける分野、グループへの支援

  • 外国人:日本に在住する外国人が直面する問題には、在留資格や受益できる福祉サービスの制限などの制度的障壁のほか、日本語を学ぶ権利が保障されていないこと、異文化ストレスなども影響しています。コロナ下では、行政と市民社会の協働による多言語電話相談センターの整備や、弁護士など専門家による無料相談会がオンラインで実施されています。また、言語的障壁ゆえに支援情報へアクセスできない外国人住民の孤立化を防ぐため、地域に暮らす日本人への働きかけも重要です。住民同士で声を掛け合える関係づくりのため、例えば一文を短くし容易な語彙を用いる「やさしい日本語」の普及活動が展開されています。

  • 障害者:常時医療ケアを必要とする人々の生命と尊厳が軽視されることのないよう、平時から十分な医療資源が確保されるレジリエントな体制の構築が必要です。市民社会と自治体、民間企業などが連携し、外出にリスクを伴う人々を支援するための買い物代行や食料支援が実施されています。併せて、労働環境の変化にも障害者への配慮や就労支援が重要です。例えば、職場介助者を必要とする障害者やITツールへの対応が困難な聴覚・視覚障害者にとって、在宅勤務の推進は職業選択の幅を狭めることになります。また、その支援の担い手は女性が多く、労働に関するジェンダー平等の推進が求められています。

  • 若者:若者は教育・就労機会の減少や精神的重圧など、コロナによる多様な影響を受けていながらも、そのセーフティネットが不十分であり、若者の間でも年齢、性別、地域、所属等によって影響の要因や程度は様々です。若者が主導するNPOなどが10代〜20代を対象とした支援活動を広げ、ソーシャルメディアを活用した相談窓口の設置や学生が集うオンラインプラットフォームの開設を展開しています。また、署名活動が活発に行われた結果、学びの継続のための「学生支援緊急給付金」の新設や留学奨学金停止の撤回が行われ、その声は政策に反映されました。

準備(Preparedness):パンデミックや災害に向けた社会システムの備え

  • エネルギー:被災時のリスクを軽減するためにも地域主導の参加型かつ分散型の自然エネルギーの利用が広がっています。これら地域レベルの取り組みは、エネルギー事業による経済的・社会的便益の地域社会への還元も視野に入れた、市民社会と民間企業の新たな連携事例として国際ネットワークの構築にもつながっています。

  • 防災インフラ:人道支援に関する国際基準である「スフィア基準」についての認識が高まっており、内閣府が策定する避難所運営に関するガイドラインも改善が重ねられています。高齢者や乳幼児を含む多様な被災者に対応するため、避難所ではコロナ対策に加え、ジェンダーに基づく暴力を防ぐという観点も含めた避難所運営の意思決定への女性の参加の保障や、トイレやごみ箱などの設備の改善といった衛生面の見直しが進んでいます。ホテルや商業施設などを避難所として活用したり、在宅避難者や未指定の中小の避難所への支援も広がっています。

  • 地域:災害時には、地域レベルでの迅速で組織化された支援の提供が重要です。熊本では、2016年の熊本地震から継続されている「火の国会議」が、支援に携わる行政、市民社会、医療機関等の連携強化と人材育成を担っており、令和2年7月豪雨に際しても力を発揮しています。また、コロナ下での避難生活のサポートブックやボランティア向けハンドブックが作成され、外国人の住民などに向けた「やさしい日本語」の活用も行われています。一方で、コロナ感染対策のため県外支援者の受け入れをしていない地域もあり、検査や保健医療のシステムを見直すと同時に、市民社会の活動が保障される制度づくりを進める活動も展開しています。

回復(Recovery):より良い復興への実践

  • 教育:2020年4月には学校閉鎖によって世界の児童・生徒の約9割(15億人)が教育機会を失いました。質の高い教育を保障するためにユネスコ主導でグローバル教育連合が設置され、約140の国際機関、市民社会、大学、民間企業が参加しています。8月にはユニセフなどの国際機関と市民社会も協力してジェンダー平等に配慮した学校教育再開の実現に向けてガイドブックが発刊され、市民社会が国内に向けた広報活動を行っています。

  • 地域:東日本大震災で被災した沿岸部では、養殖漁業のあり方を見直す上で自然環境や生物多様性への影響に加えて労働環境や地域に対する責任といった視点からも地域社会の持続性の向上に取り組み、国際的なASC認証(サステナブル・シーフード)の取得も実現しました。調査・研究に携わる市民社会の団体と自治体、企業、地域住民が数年にわたって協力し、地域に根ざした産業を軸にした持続可能な社会への移行が進んでいます。

  • 教育:日本環境教育フォーラムによる自然環境教育に関する調査によると、今夏に中止・延期された自然学校等のプログラムへの参加予定者数は38万人を超えており、学校教育以外でも学びの機会の減少が深刻です。オンラインを利用した自然観察会や学習ツールの配信に加え、支援を必要とする貧困家庭や母語ではない言語で教育を受ける子どもたちを対象にした、在宅で取り組めるオリジナル教材や絵本などの配布事業も展開されています。絵本を通じた子どもたちの心のケアを目指すとともに、ノートや色鉛筆などの学用品によって学習の継続を支援しています。

上に見てきたように、市民社会は、調査・研究、地域に根ざした支援および新たな実践を通して、パンデミックや災害で困窮する人々を直接支援する役目を担っています。また、地方自治体や民間企業など様々なセクターとの連携や、団体の運営や活動に必要な資金の確保を含めた組織基盤の強化を進めています。

同時に、レジリエントな社会の構築のためには環境や社会の変化に合わせて社会制度を適応させ続けることが必要です。SDGsジャパンは、現場での取り組みとともに、提言活動を通して、ジェンダー平等を基盤とした多セクターが参画する意思決定のシステムを求めています。SDGsジャパンが発表した市民社会からの政策提言集「SDGsボトムアップ・アクションプラン2020」では、SDGsの視点を取り入れた市民社会からの政策案を提言しています。

SDGsジャパンは「誰一人取り残されない」社会の実現を目指し、今こそ、「SDGsを軸にした対策」の重要性を再度提案します。


 

本声明に関するお問い合わせ先

一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(担当:久保田)teigen@sdgs-japan.net


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