2024年度「NPOのSDGs全国調査プロジェクト」全国7地域、29の市民組織にインタビュー
- sdgsjapan
- 4月28日
- 読了時間: 43分
更新日:8月8日
SDGs市民社会ネットワーク地域ユニットでは、2023年から赤い羽根福祉基金の助成を得て、「NPOのSDGs全国調査プロジェクト」を進めています。2024年度は「権利基盤型アプローチ(RBA)」を踏まえて、全国7地域、29の市民組織にインタビューを行いました。
インタビューでは、各組織が自らの課題を社会構造の中でどう捉え、対象とする人々の自律をどのように支援し、社会構造をどう変革しようとしているのかをお聞きしました。併せて、問題解決に向けて、市民社会組織だけでは対応しきれない部分について、他セクターとの連携の必要性についても伺い、地域プラットフォームづくりの重要性を模索しました。
また、このプロジェクトのこれまでの調査結果をわかりやすくまとめた動画「SDGsは誰のもの?」も公開しました。(視聴・詳細はこちら)
インタビュー先一覧
>をクリックすると、インタビュー内容がお読みいただけます。
1.NPO法人蜘蛛の糸(秋田県)
◆団体の説明
日本一自殺率が高い秋田県で、「常設」「面談」「無料」の相談活動の他、自殺予防の啓発や秋田県内をはじめとする各市町村、大学との連携、民間団体の活動強化のためのネットワーク作りに取り組んでいる団体です。
◆SDGsから見た団体の価値
連携で作る命のセーフティーネット
自殺の要因は様々ですが、秋田県は特に生活困窮や孤独孤立、高齢者の自殺率が高いと言われています。コロナ禍以降は働き盛り世代や女性の自殺も増えてきており、予断を許さない状況にあると言われています。
「蜘蛛の糸」はコロナ禍でも、県内各地でzoomを使ったオンライン相談会を開催するなど、どんな形でも停滞しないようにと切れ目のない相談活動を継続されていました。
また、近年はLINE相談も増えてきており、そこから必要があれば電話や対面相談につなぐようにされているとのこと。
NPOの連携が今後の支援活動のキーワード
秋田県・市町村・大学との連携、民間団体「秋田・心のネットワーク」との連携,秋田ふきのとう県民運動実行委員会へ参画、民学官報が連携した自殺予防活動を行っており、それぞれの専門性を活かした個々の活動についても情報共有、連携して取り組んでおられます。心身の健康や相談できる環境が大切であるという事から、身近な人の変化に気づいて声をかける、やさしい地域づくりを目指していて、地域活動も大事にされています。
県内の子育て支援、引きこもり支援、災害支援などのNPOと連携した相談活動も広がりを見せ、NPOの連携が今後の支援活動のキーワードになるだろうと話してくださいました。
デリケートな支援活動ですが、さまざまなセクターやNPOとの連携を大切に、あきらめずに寄り添った活動を継続していきたいと話してくださいました。

◆団体ホームページ
2.NPO法人バニヤンツリー(秋田県)
◆団体の説明
この法人は、バングラデッシュのデビシャウル村で、子どもたちへの教育支援や保健衛生指導等を行っています。また国内では、私たち一人ひとりが世界の状況を知り、考え、行動することで、公正で持続可能な社会づくりを目指した学習会を開催しています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
支援から生まれる良いサイクル
デビシャウル村では近年、学校に行けない子が増え、進学率も下がり始めていました。そこで、代表理事の藤本さんたちは、村の担当者と話し合いを重ね、経済的理由により学びたいのに学べない子どもたちを対象にしたバニヤンツリー奨学金制度を創設しました。選抜方法は年齢ごとに異なり、高校生は村の課題に向き合うワークショップを行って決定します。制度は2017年まで継続的に行い、受賞者は高校生だけでも100名を超えます。今では当初の受賞者が社会人になり、独自の奨学金制度を立ち上げて村の子どもたちを応援するなど良いサイクルも生まれています。
開発教育(世界の課題と私たちのつながり)
秋田県内では学習会を通じて、世界で起こっていることは、私たちの生活と無関係ではないことを伝えています。途上国だけでなく、日本でも貧困の連鎖から抜け出せない社会構造があることや、日常的に使っているスマホの原材料の採掘から完成品が手元に届くまでの経緯を知ることで世界の児童労働や貧困問題を考え、それぞれが行動に移すことを目指しています。実際に藤本さんたちが高校で行った学習会後には、学校祭でカレーを販売し、その売上を奨学金に寄付するなどのアクションがありました。
藤本さんは、開発途上国に対して一方的な支援をするだけではなく、双方の学びの中から生まれるものが育って行くことで良い社会を築かれることを実感しています。また、地域や他分野の活動団体とのつながりも大事にしており、今後はそれぞれの専門性を活かしたネットワークを構築していきたいと考えています。


3.認定NPO法人茨城NPOセンターコモンズ(茨城県)
◆団体の説明
NPO法が施行される1998年に茨城全域の民間のNPO支援センターとして設立され、27年活動を続けるNPO支援センターの草分け的存在。設立当初から、NPOの設立や活動、会計等のマネジメントやバックオフィスにかかわる支援にとどまらず、地域の課題を解決するNPOがなければ、自らそのNPOを立ち上げる活動も行ってきました。今回ご紹介する、多文化共生・災害復興支援活動は、外国ルーツの方たちが多く生活をする常総市を2008年のリーマンショック、2015年の鬼怒川決壊によって、特に取り残された地域課題をコモンズ自ら、行政、地域企業とも連携しながら解決するために、実施している活動です。今後も大切にしたい価値(バリュー)を以下の5つに置いています。
1.セーフティネット(制度外福祉)の充実
2.ダイバーシティ(多様性)
3.ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)
4.市民社会
5.ネットワーク型社会
茨城NPOセンター・コモンズが掲げる目指すべき社会像(団体のビジョン)は、「様々な課題当事者が社会的に包摂され、多様性が尊重され、人や組織がつながり共に行動する市民社会」とHPにも記載されており、市民社会が目指すSDGsの理念そのものです。
茨城県常総市には外国ルーツの不就学児が100人を超えているという実態を解決するためには、日本の現在の教育制度、地域の学校の実態や家庭環境が、整っていません。地域の行政への制度改正の働きかけ、外国ルーツの子どもたちの親を雇用している地域企業への雇用条件の整備や、日本語学習への働き掛けも行っています。また、全国規模の民間助成金も多様に活用し、独自に学習支援や、不就学児の学校を開設するなど具体的な取り組みも行っています。代表理事である横田能洋さんの情熱の連鎖が、それらの活動を支えています。
外国ルーツの人々の社会的包摂は、日本政府の制度自体にも多くの課題があることが支援専門のNGO等からも多く指摘されており、コモンズでは、イタリアの制度や、イスラム圏の教育を取り入れながら、地域と共生している事例なども、常に学習し、取り入れながら活動しています。ひとつのパターンにこだわらず、課題を解決するために多方面から資源をつなぎ、困難な課題に柔軟に取り組むことができるのは、民間のNPO支援センターならではの強みです。(*指定管理者制度等による箱物の運営を担っていない)


4.NPO法人シングルマザーズシスターフッド(東京都)
◆団体の説明
シングルマザーに寄り添った効果的なエンパワメント手法の提案
困難な状況に陥りやすいシングルマザーが、身体や心をケアする時間を持ち、地域を超えて交流し励まし合うことで、自分らしく胸を張って生きていけるよう支援を提供している団体です。「シングルマザーの心身の健康」に着目し、オンラインのセルフケア講座を実施したり、シングルマザーの心身の状態を調査し具体的な支援方法について検討した『ひとり親けんこう白書』を発行するなど、シングルマザーに寄り添った効果的なエンパワメントの手法を提案しています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
自己理解とピアサポートによる内側からのエンパワメントプログラム
シングルマザーズシスターフッドの特徴は、その素晴らしいエンパワメントプログラムにあると思われます。中でも、シングルマザーが自らの人生や思いを綴ったエッセイを、先輩シングルマザーの伴走支援のもとに完成させ、一般に公開し読んでもらうことで団体への寄付を呼びかける「表現による自己の回復プログラム」は、生きにくさを感じていた人が立ち上がり自己表現ができるようになるまでに必要な支援のエッセンスがたくさん詰まっていると感じました。
自分自身を定義しなおし深く見つめることで本質的な変化へ
代表の吉岡さんによれば、シングルマザーは世の中のシングルマザー像を内面化し、厳しいレッテルを自らに貼って可能性を狭めてしまうことが多いそうです。このプログラムではそんな彼女たちが、同じような境遇を経験したシングルマザーとともに、これまで自分の中でも言葉になっていなかった意識や認識を掘り下げ、自分の思いをぴったり言い表す言葉を見つけ文章に紡いでいく中で、外からのラベルを剥がし、自分自身を内側から定義し直せるようになり、未来への希望が描けるようになっていくというものでした。ピアサポートの下で自分自身を深く見つめ直し表現することにより、自己と他者の関係性の変化と自己理解の変化が同時に起こっていると捉えることもでき、それによって回復し力をつけていくというお話は、エンパワメントに求められる本質的な要素を示しているように感じました。

◆団体ホームページ
5.NPO法人Tansa(東京都)
◆団体の説明
被害者に寄り添い、権力に斬り込み、社会に変化を起こす非営利の報道機関
「今被害に遭っている人々の現状を変えること、未来の被害を防ぐことを目的に」探査報道を行う非営利の報道機関です。これまで電通と共同通信の偽装記事、エアコンメーカーのダイキンによる化学物質(PFAS)汚染や、児童ポルノを含む性的画像の売買を行うアプリの実態など、主要メディアの報じない問題について取り上げてきました。記事は国会審議などでも引用され、社会的インパクトを生み出しています。独立性を維持するため、運営資金は市民からの寄付や助成金で賄われており、ジャーナリストの育成にも力を入れています。世界の探査報道と連携しつつ、国内では企業、NGO、大学を対象に啓発活動にも取り組んでいます。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
問題の構造を捉えるたゆまぬ努力
Tansaは、問題の構造を探索することで、被害者の現状を変えることを目的としています。その過程では、問題解決の責任を負うべき政府や企業などの対象に直接はたらきかけます。
問題把握の手法をアレンジして開発
問題の構造を捉える手法として、日頃よりFBAR(エフバー)という枠組みを使って議論をしているとのお話が印象的でした。FBARは、Fact:起きている事実、Backgrouond:背景、Assessment:問題は何であるかという評価、Recommendation:どうするべきなのか、を今わかっている情報で約150字にまとめるというもので、米潜水艦隊や医療現場の問題把握の手法を渡辺代表がアレンジして開発したものだそうです。
構造的問題に働きかける
お話を伺った辻さんによると、取材が進んでいく中で、FBARよって描き出された問題の構造は繰り返しアップデートされ、より大きな絵が見えてくることも多いそうです。問題の構造を捉えるのは簡単ではないことを教えられるとともに、社会課題に関わる私たちも、課題の構造的背景を捉える努力をしつつ、Tansaさんのようなメディアとも連携して、構造的問題に対しても働きかけていくことが重要ではないかと感じました。

◆団体ホームページ
6.認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク(東京都)
◆団体の説明
地域密着で、地縁型組織とテーマ型組織のいいとこどりで、
議員とも行政ともよい距離感を作り続ける
「地域の子どもを地域で見守り育てる」というミッションのもと、外国ルーツの子どもも設立された2012年から普通に通ってきていたそうです。東京都豊島区に根を張り、今では、プレーパーク、無料学習支援、こども食堂、シングルマザー交流会、不登校の親の会を定期的に実施しています。運営は民生委員児童委員だったり、地域のPTAで活動していたり、町会連合会に関わっていたりする地域に根差した女性が中心的に活動を進めています。手弁当でできることを持ち寄るボランティア団体という側面を持ちつつ、助成金や区からの補助金を活用して、定常的な活動はNPO法人として有給の職員も雇用しています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
「同じ立場」を自然体でつづける努力
代表の栗林さんは、NHK日曜討論にも出演し、地域のこどもの実態とそれを支える地域の現状を同じ立場として発信をし続けています。「同じ立場」というのは、市民活動団体が持っている大きな価値の一つ。昨今は、中間支援機能が注目を集めていますが、こどもや親たちをプログラム参加者として消費者(お客様)化したり、地域を課題化したり、それらを前面に押し出してクラウドファンディングで資金を獲得して活動を進めるような、表面的な取り組みではなく、「同じ立場」であることを大切にされています。
それは、SDGsが言っている、持続可能な地域づくりにおける重要な「視点」ではないでしょうか。
具体的な例として挙げてくださったのが、「子どものセーフガーディング」への取り組み。仲間づくりの中で、思いは共有できていてもこれまでの習慣や価値感が違うこともあるため、子どもの写真撮影や身体接触、日常的なスキンシップなど、子どもの権利やセーフガーディングを具体的に学びながら実践しているとのことでした。居場所に集う子どもの中には、大人とのスキンシップが足りずに成長してきており、セーフガーディングのガイドラインでは、NGな接触も、経験上必要な接触があることも分かってきており、ガイドラインを鵜吞みにしすぎず、「同じ立場」から、経験や学び合いを大切にしているとのことでした。

◆団体ホームページ
7.一般社団法人アマヤドリ(神奈川県)
◆団体の説明
若者の居場所と支援を提供
既存の制度では支援が届かず、孤立・困窮する若者をサポートするための活動を行なっています。日本では18歳で成人となり、児童福祉法や児童虐待防止法の対象外となるため、多くの若者が支援を受けられません。元高校養護教諭として、卒業生からの虐待相談を受ける中で、18歳を超えると制度の狭間で支援が途絶える現状があります。日本はG7で若者の自殺率が最も高く、この深刻な課題に対応するため、若者の居場所と支援を提供しています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
全国からの相談に応じる
SDGsの目標1「貧困をなくそう」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標10「人や国の不平等をなくそう」に貢献するため、本団体は相談とサポート付き住居、短期型シェルター、シェアハウス、ステップハウスを運営し、年間40名の若者に住まいと支援を提供しています。また、年間1,500件以上の相談対応を行い、全国からの相談に応じています。
さまざまな団体との連携
行政との連携も強化しており、神奈川県「かながわボランタリー基金21」を活用しながら、県の住宅課や男女共同参画課と協力しています。市役所、病院、学校などの公的機関ともネットワークを築き、若者が適切な支援へアクセスできる仕組みを構築しています。また、企業との連携も進めており、就職先の確保や物資提供を受けながら、さらなる企業支援の拡大を目指しています。
誰もが自分の生き方を自分で選べること
本団体のビジョンは「誰もが自分の生き方を自分で選べること」。若者が自分自身の人生にオーナーシップを持ち、自ら選択し、自己肯定感を高める経験を積めるよう支援しています。制度を超えて柔軟に動ける市民活動として、行政との連携を重視しながら、批判ではなく「気づきの提案」を行い、社会全体で若者を支える仕組みを築くことを目指しています。
◆団体ホームページ
https://www.amayadori-official.net/
8.一般社団法人4Hearts(神奈川県)
◆団体の説明
同じ瞬間に笑い合える社会へ
4Heartsは、聴覚障害者が直面する「見えないバリア」に着目し、情報・コミュニケーションの壁をなくす活動を行っています。聴覚障害は外見からは分かりにくく、当事者が抱える課題は多様です。しかし、その実態は社会に十分理解されていません。4Heartsは、聴覚障害者が直面するコミュニケーションの壁を重要な課題と捉え、「同じ瞬間に笑い合える社会へ」というビジョンのもと活動しています。「伝える・伝わるに選択肢を」をミッションに、視覚・発達障害者、高齢者、外国人、子どもなど、情報格差のない共生社会の実現を目指しています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
「心の低温やけど」を3つのアプローチで解決
4Heartsの取り組みは、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念と深く結びついており、特に目標3(すべての人に健康と福祉を)、目標4(質の高い教育をみんなに)、目標5(ジェンダー平等を実現しよう)、目標8(働きがいも経済成長も)、目標10(人や国の不平等をなくそう)、目標16(平和と公正をすべての人に)に貢献しています。
聴覚障害者が抱える課題の本質は、社会に十分認識されていません。たとえば、障害者手帳を持たない難聴者は、「曖昧な聞こえにくさを説明しにくい」→「伝えることを諦める」→「わかったふりをする」という悪循環に陥りやすく、4Heartsではこれを「心の低温やけど」と表現しています。また、聴覚障害の子どもの9割は聞こえる親のもとに生まれ、家庭や学校、職場で会話から孤立する「ディナーテーブル症候群」に苦しんでいます。この社会的孤立は、雑談から得られる社会常識の欠如や職場定着率の低さにつながります。
こうした課題の解決に向け、①当事者と社会の意識変革、②テクノロジーの活用、③地域との協働の3つのアプローチで活動しています。ヘッドフォンを用いたワークショップで聞こえにくさを体験し、孤独や孤立への理解を促進。また、神奈川県と協働し、商店街での音声認識機器の実証実験を行い、聴覚障害者や外国人がよりスムーズにコミュニケーションできる環境を整えることに寄与しています。さらに、自治体やNPOと連携し、手話普及団体やブラインドサッカーチームと共に「スローコミュニケーションプロジェクト」を展開。子ども向けにヘッドフォンやアイマスクを用いた疑似体験を提供し、共生社会への理解を深めています。
◆団体ホームページ
9.富山CAP(富山県)
◆団体の説明
子どもたちに安心・自信・自由の権利を伝える
1978年アメリカで起きた小学生へのレイプ事件がきっかとなって、アメリカで開発され、全米、全国に広がった人権教育プログラムCAP(Child Assault Prevention 子どもへの虐待防止)を知った岸順子さんが、富山でも広めていこうと、1999年から活動を始めた団体。子どもたち自身が持つ「安心」「自信」「自由」といった権利を認識し、エンパワメント(内なる力の強化)を促すことで、子どもたちに安心・自信・自由の権利を伝え、暴力を拒否する力を育む活動を、県内の学校や教委員向けなどに行っています。また、周囲の大人が連携し、子どもを孤立させない支援体制、コミュニティ作りも行っています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
「血の通った」人権意識の普及
人権を、暮らしの中で「道具」として使えるレベルで伝えられているのは、富山の中では富山CAPさんしかいないといっても過言ではないほどで、しかも25年以上一度も途絶えることなく地道に長く活動をされてきたことは、富山の「血の通った」人権意識の普及にとても大きな役割を果たしている存在です。
特に、子どもへのアプローチは、本人の人生のみならず、社会全体に人権意識が広まっていく基盤づくりにおいても大きく貢献しています。SDGsとしては16.2「子どもに対するあらゆる暴力を無くす」、そしてSDGs16全体の「公正で安心できる社会づくり」に貢献しています。
それぞれが感じる「痛かった」「辛かった」などの感情に、しっかり耳を傾け、寄り添い、それぞれの内なる力をエンパワメントしていくワークショップとして、いじめ、誘拐、やられていやなこと、といった具体的な状況をロールプレイしながら、「NO(いや!), GO(逃げる), TELL(話してね)」といった具体的な行動指針を示し、使えるようにしていくプログラムなどを行っています。一人一人の気持ちに寄り添った「誰一人取り残さない」丁寧な関わりを大切にされている団体です。


◆団体ホームページ
https://toyamacap.wixsite.com/toyamacap
10.NPO法人 ハッピーウーマンプロジェクト(富山県)
◆団体の説明
女性と子どもの人権が尊重される社会へ
男女不平等な社会、女性と子どもの人権が尊重されない社会はおかしい!との思いから、女性と子どもが自分らしく安心安全に暮らせる社会を目指そうと、思いを同じくするメンバーで2006年に設立。県の女性健康相談センター不妊専門相談センター受託運営や企業等のハラスメント外部相談窓口の運営などの相談・要支援者発見事業や、困難を抱える女性のための民間シェルター運営などの支援事業、学校や企業等へ向けた予防啓発講座や研修事業など、子どもから大人までを対象に、多様な手法で多岐にわたる活動を行っています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
包摂的なコンセプトで、多様な事業を多方面に展開
富山県中小企業家同友会を通じた企業セクター向けの勉強会「ダイバーシティ市民大学」、固定の施設で相談を待つのではなく、富山駅ナカへ出張相談所を設けアウトリーチしていく「駅ナカ保健室」の取り組みなど、狭義での女性支援ということに留まることなく、それを根底としあらゆる人々の真の幸福(ウェルビーイング)実現につなげていこうと包摂的なコンセプトを持って、多様な事業を多方面に向けて展開されていて、そのような地域社会(富山県)づくりに実際に大きな役割を果たされている存在となっています。SDGsにおいてもGoal5「ジェンダー平等を実現しよう」を軸としながらも、1貧困、2食、3医療、4教育:権利の教育、16暴力(児童虐待)へも自覚的にアプローチされているとインタビューで語ってくださいました。あらゆる人が自らを尊重しつつ、人と人が対等な関係を作り継続していく方法を、学び経験する機会を子どもの教育の場に取り入れようと、ユネスコが提唱する包括的性教育(国際セクシャリティ教育)の富山版を作成し、導入していくことにも挑戦中です。これが実現すれば、5才〜18才以上まで、それぞれの発達段階に応じたカリキュラムで、生きるためのスキルを皆が継続して学び、身につけていくこととなり、誰もが生きやすい豊かな社会の実現へ大きな基盤となることでしょう。富山において、人権基盤型アプローチの視点を持ち重要な役割を果たされている団体です。


◆団体ホームページ
https://happy-woman-project.net/
11.NPO法人まちづくりスポットとやま(富山県)
あなたの「やりたい」「やってみたい」の実現を応援するNPO
ここでつながる、ここからはじまる。まちスポとやまはあなたの「やりたい」「やってみたい」の実現を応援するNPOです。地域活動やNPO、コミュニティの活性化を支援する中間支援組織です。具体的には、場所や資金の提供、相談対応、伴走支援などを行い、団体同士の連携を促進することで、個々の団体では解決困難な課題解決を支援しています。また、海外ルーツの方々との交流や子育て相談、インターンシップなど、地域住民向けの直接的な活動も展開しています。これらの活動を通じて、地域全体の課題解決と活性化に貢献しています。
※認定NPO法人まちづくりスポット(岐阜県高山市)のサテライトオフィス(富山事務所)から、2025年3月10日にNPO法人まちづくりスポットとやまとして独立した団体に変わりました。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
能登震災での気づきから多様な主体間の情報共有と連携促進による
様々な地域課題の解決へ
富山市で、広く市民活動団体を対象に伴走型で中間支援活動をされている唯一の団体です。2024年1月の能登震災の直後、代表の田辺友也さんは、ボランティア等の市民活動団体を支える募金の受け皿が富山にはないことの問題を速やかに捉え、「とやまささえあい基金」の名でその仕組みをいち早くつくりました。それを機に、官民等のセクターを超えた災害時にも機能するきめ細やかな支え合い体制を実現しようと、平時からの富山県内を中心とした各種団体とのネットワーク構築も進めています。地域住民や市民活動団体のみならず、行政や社会福祉協議会、企業との連携においても信頼が厚く、多様な主体間の情報共有と連携促進による、様々な地域課題の解決へ大きく貢献している団体です。SDG sにおいては富山における「パートナーシップ構築」(ゴール 17)に大きな役割を果たしています。産後うつ・子育て相談、まち歩きイベントなど健康増進(SDGsゴール3)に関する直接的なアプローチをされているのも特徴です。それらの実践においても、多様な主体が交わる工夫(まち歩きを海外ルーツの方々と行う等)があり、パートナーシップ構築の機会を意識的に創出しています。


◆団体ホームページ
https://www.machispo-toyama.org/
12.地球人(長野県)
◆団体の説明
「おやぁ?」という気持ちを分かち合う
どんな子もゴキゲンに暮らせる地域の実現をミッションに、不登校や発達障害、情緒の安定に困難がある子どもに対する学習支援や居場所を運営。また、子どもに対して育てにくさを感じている保護者も含めて、「おやぁ?」という気持ちを分かち合う場づくりをしている。
・子どもの発達特性に沿った個別学習支援 本人のペースに合わせて週2回〜月2回程度
・親の会(親同士の自助グループ)月1回相談・情報交換の場を開催
・子どもの居場所 週1日平日昼間の子どもの小さな居場所開催
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
社会との接続を複数創り出すことによる安心感
活動をするうえでの考え方の根底には、学校になじめない子どもが学校にいけないということそのものが「不利益を被っている」=「人権が守られていない」との捉え方がある。一斉教育ではできないひとり一人へのアプローチを丁寧にしていて、必要に応じて行政や他の団体との連携しながら、その子にとっての安心な居場所を作っている。居場所での支援の特徴は「そこでしか生きられない」ではなく、「ここがあるから生きられる」ように、自己肯定感の醸成や自己認知力を高めながら、社会との接続を複数創り出すことによる安心感を担保している。子どもの声に耳を傾ける姿勢で、大人が思うこどもの権利ではなく、子どもが本来もっている権利を常に考え支援していることもRBAの視点で重要。
親のエンパワメントも
また、当事者の親でもある代表者が、自身の経験をもとに立ち上げたことから、より当事者に近い立ち位置で、感情や知見の共有による親のエンパワメントもしている。
親も子もエンパワメントされることで、当事者発の提言力が高まるという視野も持っていて、ひとり一人へのアプローチと同時に、社会へのアプローチの両側面で活動している。

◆団体ホームページ
https://www.facebook.com/gokigenseeds
13.NPO法人 D-shipsSHiPS32(長野県)
◆団体の説明
インクルーシブな文化の醸成とアドボカシー活動も
障害のある人とない人が出会い交流する場を、主にスポーツや野外活動を主軸にして作っている。イベントの開催や教育現場での講演会などを通してインクルーシブな文化の醸成を図っている。
また、ハード面でのユニバーサルデザイン実現のため、アドボカシー活動も並行して行い、どの事業も企業や大学生、パラリンピックオリンピック選手など多様な人たちとの協働でつくっている。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
国際基準による障害者だけでなくその家族も含めた当事者のエンパワメントを
代表の上原大祐さんは、「障害当事者は公共施設を借りれなかったり、普通学校に入学できない」など誰一人取り残さないどころか取り残しまくっている今の日本の差別と鞭を解消したい」と言う。自身も含めた障害者がさまざまな場面で体験する差別の原因を、「知らない、交わらない、教育がない」ことが理由と考えて主にスポーツや野外活動イベントを展開している。
国連でも「先進国で日本だけがやっていない」と言われるインクルーシブ教育を推し進めるため、教育現場での講演会や行政のアドバイザーとして関わりながら、長野県東御市では車いすのシェアリングプロジェクトなどほかにない施策を生み出している。
車いすユーザーの学生がイベントの運営メンバーになったり、障害者の兄弟も一緒にイベントに参加するなど、取り残されがちな人たちへのまなざしも持ちながら、障害者だけでなくその家族も含めた当事者のエンパワメントを実現している。社会とのつながりがない障害児のためにメタバース空間を利用した交流事業もその一つ。

◆団体ホームページ
14.cocore(ココワ)(静岡県)
◆団体の説明
障がいのある人のアート活動を通じた社会づくり
静岡県中部を中心に、障がいのある人のアート活動を通じて、個々を認め合い共に生きる豊かな社会づくりを目指して活動している団体。具体的には障がい児・者の創作活動を通じて当事者の可能性を広げ、生き方や就労のあり方の選択肢を広げることや、啓発イベントによってそれを多くの人に知ってもらう活動を行なっている。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
世間一般からはみ出たように見える部分にも価値と魅力を見出す
cocoreの活動は今でこそ市民権を得ている障がい者アートが広がり始めた頃から活動されており、その根底には成果であるアート作品ではなく、それを生み出す障がい児者一人ひとりの持つ個性や、才能、魅力を信じ、そこに価値を見出す姿勢があります。ともすれば、障がい者の特性の中で社会に適合する部分だけを抽出して就労に結びつけがちなところを、あえてそれぞれの世間一般からはみ出たように見える部分にも価値と魅力を見出す視点は、私たちが重視している権利基盤型アプローチが大事にする「その人らしさ(=尊厳)」という点と通底するものだと思います。cocoreでは「人権」をテーマにしたり、アドボカシーのような活動はしないと決められているものの、その点は連携する「手をつなぐ育成会」という提言活動をされている団体と役割分担することで、より当事者に向き合う方向に専念されていると言えます。一方で、企業向けのアプローチは積極的にされており、障がい児者を取り組みべき社会課題当事者としてではなく、共に社会を作っていくステークホルダーであると伝えられていることは、まさに社会を変える「トランスフォーメーション」の一つのきっかけであると思います。

◆団体ホームページ
https://cocoreart.jimdofree.com/
15.シングルペアレント101(静岡県)
◆団体の説明
離婚前後のシングルペアレント当事者の支援
「ひとりひとりが自分らしく暮らせる社会」の実現を目指して、離婚前後のシングルペアレント当事者、支援者向け調査冊子の発行、当事者・支援者向け講座、離婚前後のひとり親世帯へ食料提供を行っている。2023年には離婚前女性支援のための「プレシングルマザー手帖」を発行。また、全国組織などとも連携したアドボカシー活動も積極的に行っている。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
全国組織などとも連携したアドボカシー活動も積極的
近年発表されているジェンダーギャップ指数をみても、日本社会における女性の生きにくさは他国に比べても顕著であることは自明であり、特に役割が強く意識される婚姻関係及びその解消、あるいは離婚後のシングルマザーの生きづらさはその構造的な課題が如実に反映されています。
当事者の方々の声を丁寧に集める
そうした中で、シングルペアレント101では当事者の方々の声を丁寧に集め、問題を可視化し、その方達に寄り添った活動を展開されてきました。だからこそ、離婚後のひとり親だけでなく、離婚前の女性支援というアプローチが実践されているのだと思います。また、現場のニーズに応えるだけでなく、その現場での実践を元に課題の構造を変えるべくアドボカシー活動も積極的に展開されており、SDGsの視点でただ単にGoal5ジェンダー平等に貢献していますということではなく、その理念である「誰1人取り残さない」ための草の根の活動と、社会を変革する「トランスフォーメーション」にもつながる活動の両面に貢献されていると思います。

◆団体ホームページ
https://www.single-mama.com/council/member/singleparents101/
16.NPO法人KARALIN(大阪府)
◆団体の説明
KARALINは「多様性を認め合い、おとなと子ども、女と男が対立や上下関係なく、お互いの命と心が尊重され、暴力に代わる問題解決がなされる社会の実現」を目指し、大阪府八尾市を拠点に、地元、そして関西・全国で、取組を展開している団体です。とくに子どもの権利に関し、「子どもの権利条約 関西ネットワーク」を支える主要団体の1つとして活動するほか、子どもやおとなの居場所の開設、いじめ・デートDV防止ワークショップやペアレンティング講座も実施されています。
◆SDGsから見た団体の強み
「権利基盤型アプローチにもとづく取組展開」
子どもの権利の保有者である子どもたち自身に関し、同団体は、八尾市すべての小学校28校の3年生を対象に子どもへの暴力防止プログラム(略称はCAP)を実施してきたCAPグループの有志が立ち上げたもので、現在も協力関係にあります。また、「子どもの権利条約 関西ネットワーク」という広域枠組みを活かし、子どもの意見形成・表明を支援する「なんでやん!すごろく」を開発し、普及するということにも取り組んでおられます。また、責務履行者に関しても、親子の分断・孤立を防ぐ居場所を運営するとともに、市内のほかの居場所とのネットワーク化をはかっておられます。さらに、地元自治体のこども計画についても、市内外のネットワークを活用しながら蓄積してきた知見を活かし、計画策定委員会委員として策定にかかわるとともに、子どもたちがその意見を表明するために、対面スポット型や常設型というように、多様な場を設けることにも尽力されています。

◆団体ホームページ
17.NPO法人花と緑のネットワークとよなか(大阪府)*掲載待ち
18.まんぷく食堂(大阪府)
◆団体の説明
毎週土曜日に開かれる「まんぷく食堂」は、子どもを真ん中に、誰でも来られる地域の居場所です。「子どもは地域の宝」との思いで10年前に立ち上げ、心も体もまんぷくになることを願って名付けられました。支援を前面に出すのではなく、多様な子が自然に交わる中で、必要な子にはそっと手を差し伸べる。身近な「できること」から始まった活動が、今も地域の温かい居場所を育んでいます。
◆SDGsから見た団体の強み
「善意がつながる土曜の食卓」
「まんぷく食堂」の最大の強みは、特別なことをしなくても、地域にとって必要な「場」であり続けていることです。料理の提供を中心に活動する中で、子どもたちは自然と集まり、やがて成長するとボランティアとして戻ってくる――そんな温かな関係性が育まれています。
その背景には、代表の山下さんが「自分にできることは料理」と割り切り、他のことは人に頼ったり相談したりする柔軟さがあります。これにより、活動は閉じず地域に開かれ、多様な人がそれぞれのスタンスで関われる仕組みが育まれています。 毎週土曜日、10年にわたって継続されてきたことで信頼と認知が高まり、子どもの課題に直接関わっていなかった地域の人々も、間接的に居場所づくりに関わるようになりました。支援というより、誰かの思いや善意を自然と受け止められる「日常の風景」として根づいていることが、この場の大きな力です。無理なく、できることを続ける姿勢が地域の人を動かし、ゆるやかなつながりを生んでいます。
こうした継続的で開かれた取り組みは、地域の枠を超えて評価され、国や自治体の推薦を受けて、守口市のふるさと納税の寄付先にも選ばれました。これからは地域外の方々も含め、支援の輪がさらに広がっていくことが期待されています。もしかすると、これを読んでいるあなたも、その輪の一人になるかもしれません。地域に根ざしつつ、多様な人々をゆるやかにつなぐこの「場」は、今後も静かに、しかし着実に広がりを見せていくでしょう。

19.NPO法人こども環境活動支援協会(兵庫県)
◆団体の説明
こども環境活動支援協会(LEAF)は、1998年に西宮市の呼びかけで設立されたNPOで、子どもたちが自然等と関わりながら自主的に対話的に深い学びができるような環境教育・環境学習を推進しています。地域・学校・企業・行政と連携し、調査研究として西宮市の環境学習システムの開発や自然体験活動、国際交流など多様なプログラムを展開。持続可能な社会づくりに貢献する次世代の育成を目指しています。
◆SDGsから見た団体の強み
「地域に根ざし、地球規模で行動するLEAFの力」
LEAFの最大の強みは、「地球規模で考え、地域で行動する」という理念を、地に足のついた形で実践してきた点にあります。西宮市を拠点に、企業・行政・学校・地域団体と連携し、子どもたちの環境活動や教育を丁寧に支えてきました。その取り組みは、地域全体の環境意識を育みながら、全国に広がるモデルづくりへと発展しています。
とりわけ注目すべきは、NPOにとって連携が難しいとされる中小企業や商店との協働です。2000年代には企業会員が100社を超え、学校プログラムの提供や「びん分科会」「エネルギー分科会」などを通じて、地域に根ざした活動を展開してきました。
さらに、西宮市が進める「地球ウォッチクラブ(EWC)」や「エコカードシステム」などの事業にも深く関わり、行政・学校・企業との橋渡し役を担ってきた実績も光ります。これらの取り組みは、他地域でも展開可能な先進的モデルとして注目され、国の施策にも取り上げられています。
近年は農業や食をテーマに、子どもだけでなく親子を対象としたプログラムにも力を入れています。地元を大切にしながら、地球的な視野をもって活動する――その姿勢こそがLEAFの最大の強みであり、地域に根ざすNPOの一つの理想像を体現しています。

20.コープ自然派兵庫(兵庫県)
◆団体の説明
コープ自然派兵庫は、食と農と環境は一体と考え国産やオーガニックの推進を通じて、協同の力で循環型社会の実現を目指す生協です。商品企画から調達・検査・物流・システム運営まで一括して行い、国産オーガニック推進や食品添加物削減に取り組んでいます。組合員の参画を重視し、情報公開やイベントを通じて「つくる人」と「食べる人」をつなぐ持続可能な食と農の未来を目指しています。
◆SDGsから見た団体の強み
「選ぶことで未来を変える」
コープ自然派兵庫の強みは、「食」を切り口に、持続可能な社会の実現をめざして地域で実践的な活動を展開している点にあります。食の安心・安全、有機農産物の普及、脱炭素社会への貢献、貧困世帯の支援など、多岐にわたる社会課題に取り組みながら、「誰もが有機農産物を食べられる社会」の実現を目指しています。
その活動の根底には、暮らしの当事者である市民が自ら学び、考え、仕組みをつくっていくという姿勢があります。かつて「食」に起因する公害として深刻な影響をもたらした水俣病から、命と環境のつながりの大切さ、そして行政任せではなく自ら動く必要性を学んだことが、この団体の原点となっています。
また、消費者として「食べる側」だけでなく、「作る側」とのつながりも重視し、農家や食品・調味料メーカーなどと連携を深めています。2023年には「あかしオーガニック推進協議会」を設立、2025年には(株)泉平と(一社)日本有機加工食品コンソーシアムと(生協)コープ自然派兵庫の3社が連携しオーガニック給食事業部会を立ち上げ、オーガニック給食の導入促進に取り組むなど、子どもたちにも有機農産物が日常的に届く仕組みづくりに挑戦しています。
組合員とともに、商品開発や配送の仕組みづくり、イベントや勉強会の企画・実行に取り組むことで、得た学びを社会に還元し、政策提言にも活かしています。こうした取り組みは、市民一人ひとりの力が集まり、社会に働きかける実践の場となっています。
今後は、福祉の分野にも事業を広げていくそうです。地域の現場から政策へと働きかけ、暮らしの担い手である住民の力で社会を変えていく姿勢こそが、コープ自然派兵庫の大きな特徴といえます。

21.食の未来を創る会(兵庫県)*掲載待ち
◆団体の説明
「私たちの代で地球をできる限り自然豊かな姿に戻し、子どもたちの幸せな未来へとバトンを繋ぎたい」という想いをもって、「ケミカルフリーな食と農」を実現していく活動をしている団体です。現在はオーガニック給食の促進や子どもたちとの農体験、食と農のツアーや地域でのマルシェを通して、自然エネルギーの循環、自給自足、手作りの文化、生きる知恵と力を育む教育などがバランスよく調和した「自立型の暮らし」への時代を目指しています。
◆SDGsから見た団体の強み「地域の声からはじまる、食と暮らしの社会変革」
「食の未来を創る会」の最大の強みは、常に地域社会の視点を大切にしながら、地道な啓発活動と、市民の声や願いを行政に届ける橋渡し役としての役割を両立させ、実際に地域の変化を生み出している点にあります。自然や生物多様性、そして「食」というテーマについて、歴史的背景や社会構造の変遷を深く理解し、「現状にどうアプローチし、何を変えていきたいのか」を団体内で共有している点も、大きな特徴です。
専門家を招いた勉強会を通じて知見を深めると同時に、地域政策にアプローチする際にはコーディネーターとして多様な協力を得ながら、理解者を増やしています。また、子どもたちの農体験や「食と農」のツアー、地産地消をテーマにしたマルシェの開催などを通じて、市民一人ひとりの意識や行動の変化も促しています。こうした多面的な取り組みにより、未来世代へ豊かな暮らしをつなぐ実践がなされているのです。
さらに、拠点とする伊丹市から兵庫県内各地の団体とも連携を進めており、地域を超えたネットワークの広がりが、今後のさらなる発展に大きく寄与すると期待されています。

22.NPO法人岡山市子どもセンター(岡山県)
◆団体の説明
夢や希望が語れる社会の実現を子どもたちと目指す
「体験は、ビタミン。」をモットーに、舞台芸術鑑賞会や就学前親子の居場所、プレーパークの運営などによる体験活動を行っています。子どもには、豊かな子ども時代を過ごす権利があります。岡山市協働のまちづくり条例全面改正(H28)、岡山市文化芸術基本条例制定(R4)、岡山市こどもの権利に関する条例(仮称)(現在検討中)などに関わり、ひとりひとりの個性が輝き、夢や希望が語れる社会の実現を子どもたちと目指していきます。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
扉を叩いても動かなかったところを、
協働の横ぐしを刺して揺り動かし、理解を深めてもらう
前身の子ども劇場時代も含めると 56 年間、多くのボランティアとともに子どもたちに生きる力を育む体験を届け続けています。舞台芸術には56年で延べ44万人以上が参加しました。就学前親子の居場所には毎年延べ1600人、プレーパークには12000人程度が訪れています。
SDGsに関して、子どもの健全育成の活動は、SDGsのどの目標に関連し合い、どう数値的に成果を示すことができるか悩ましいところです。一方で、RBAの観点から考えると、活動を更に広げ、子どもたちの豊かな育ちを促すために、市役所各課への訪問と担当者との関係づくり、情報共有などを長年続けておられます。扉を叩いても動かなかったところを、協働の横ぐしを刺して揺り動かし、理解を深めてもらうことにチャレンジし続けています。条例の改正や制定にしっかり参画し、活動の現場で感じていることや子どもの声を届けることは、市民活動団体が担う役割のひとつだと感じています。
このように、権利保有者と責務履行者の間にいて、仕組みをつくることに関与し続けています。目に見える成果を表現しづらい一方で、「豊かな子ども時代を過ごす権利」を実行できる環境づくりに取り組んでいることに、市民活動団体ならではの価値を見出しました。


◆団体ホームページ
23.NPO法人玉野SDGsみらいづくりセンター(岡山県)
◆団体の説明
「つながり」ながら、住み続けたい・住んでみたい町を実現する
玉野市協働のまちづくり基本条例(2011年)の制定に際して集まったメンバーを中心に、2020年に任意団体として発足、2024年3月にNPO法人格を取得した中間支援組織です。住む人も、学ぶために来る人も、働きに来る人も玉野市を応援する人が、「つながり」ながら、住み続けたい・住んでみたい町を実現することを目的に、地縁・目的型団体・企業・学校・行政と連携しながら地域活動連携や人材育成などの活動を行っています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
玉野市が好きな若者を増やす
SDGsの目標11、目標17への貢献を意識して活動されています。活動の一コマずつに、連携する地縁組織や市民へのSDGsの浸透を図る声掛けや仕掛けに取り組まれています。
市内4高校と連携を取りながら、高校生のやりたいことを尊重できる活動を目指し、特に地域と高校をつなぐ役割を担っています。これは、任意団体時の市内高校生1000人への調査で「市内に住み続けたくない人が66%」との衝撃的な結果を受け止めたうえで、人口流出をできるだけ防ぎ、玉野市が好きな若者を増やすまちづくりの取組として行われているものです。
調査結果等を基に丁寧につなげる
条例制定に端を発したという経緯もあり、市との連携は深いものになっています。地域づくりコーディネーター業務を受託し、市内9か所の市民センターで相談対応や活動支援等に取り組まれていますが、ここに至るまでにも、任意団体時の市内団体へのヒアリング調査結果等を基に市の担当部署との話し合いがありました。丁寧な目線合わせが行われているからこそ、団体と市それぞれが持つ情報やノウハウを上手に活用し合って、高校生のエンパワメントや持続可能なまちづくりにつなげています。


◆団体ホームページ
24.特定非営利活動法人こども未来ネットワーク(鳥取県)
◆団体の説明
すべての子どもたちが生の舞台に触れる機会を
鳥取県西部地震(2001年)での被災者支援のチャリティ公演をきっかけに「鳥取県内すべての子どもたちが生の舞台に触れる機会を作りたい」「子どもたちの体験活動や社会参画の機会の広げたい」と、子どもに関わる活動をする人たちが手を取り合って立ち上げた団体です。子どもたちにいきいきとした《子ども時代》を過ごして欲しいと「アートスタート」「メディアスタート」「トイスタート」を柱に、現在活動しています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
子どもの文化権を推進・実践
子どもの権利条約31条が掲げる「休息・余暇、遊び・レクリエーション、文化的生活・芸術に参加する権利」(子どもの文化権)を推進・実践しています。目を輝かせ、舞台に集中し、心が躍動する子どもたち。被災地支援がきっかけに立ち上がった「すべての子どもへ」という視点が「権利」へのアプローチを支えています。
市町村との連携により結果として自分たちが鍛えられた
0歳・乳幼児期から小さい規模で良質の生の舞台に触れる機会をつくりたいと県に働きかけた結果、アートスタート事業(補助事業)として制度化されました。当初こども未来ネットワークが補助金の全てを使ってこの事業を実施していましたが、市町村を通した間接補助となり、直接的な収入の道は閉ざされました。しかし、結果的には、市町村や地域の方々が企画・実施者として力をつけ、自分達も鍛えられ、コーディネーターとして成長することができたとのことです。
また、境港市では2013年より自治体の子育て支援施策の一環として、0歳からすべての子どもに生の舞台芸術作品が届けられることになりました。親の所得や自由に使える時間に左右されがちな子どもの舞台芸術体験。“すべての子どもが、生活する場所で生の舞台に触れる機会”を全県に広げていく取組に期待しています。

◆団体ホームページ https://kodomo-mn.com/
25.認定特定非営利活動法人ハーモニィカレッジ(鳥取県)
◆団体の説明
エネルギーの自給も行うポニーとの活動
「100年を生き抜く底力を育む!」を理念に掲げ、「子どもに自信と誇りを!若者に希望と主体性を!大人に安心と繋がりを!」を合言葉に、「子どもがイキイキできる日常があり、若者がワクワクできる未来を感じ、大人がニコニコできる社会」をめざし、ポニーとともに、①フリースクール「まなび~馬」、②森のようちえん「認定こども園ぱっか」、③馬の合宿キャンプや、海でのキャンプやビーチクリーン等を行い、④地元の「市民エネルギーとっとり」と協働して、ポニー発電所を設置しエネルギーの自給も進めています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
子どもが主体の活動が保障される場として
ハーモニィカレッジには子どもから大人まで多様な人が集まり、個性豊かなスタッフや学生ボランティアがイキイキと活動しています。鳥取県東部にある空山ポニー牧場を拠点に、ポニーとともに、自然の中で五感をフルに使うホンモノ体験を展開しています。県内外に支援者がいて、地域との繋がりや体験を通じて学ぶ機会がたくさんあります。ありのままで過ごせる時間と場が保障され「自分で考えてやってみる!」子どもが主体の活動があります。2011年の東日本大震災以後、子育てや教育は環境やエネルギーのこととも繋がっていることを知り、地元の「市民エネルギーとっとり」と協働してエネルギー自給も進めています。
先代から受け継いだ理念を大切にしながら統合的にアプローチ
代表理事の大堀さんは、2代目理事長で先代から受け継いだ理念を大切に、事業を拡げ、関係人口を増やしながら、雇用の機会をより広げていきたい、SDGsの三要素(経済成長・社会的包摂・環境保護)を統合し、パートナーシップによって社会を変革していく一助になれればと語っています。

◆団体ホームページ
https://www.harmony-college.or.jp/
26.ゆりはま子育てネットワークくぷくぷ(鳥取県)
◆団体の説明
安心して子育てできる地域を目指す
団体名の『くぷくぷ』はハワイ語で「新芽」を意味し、子どもたちがたくましく芽吹き、すくすく育ち、地域に自然と笑顔が生まれますようにという願いが込められています。そのような安心して子育てできる地域を目指して、2022年4月に湯梨浜町で活動をスタートしました。
産後のお母さんのケアを目的としたサロン「ぐ~たらママ」と、親子でゆっくりと過ごせる遊び場「あそび~の」の2つを事業と、加えて、年数回開催する研修会による子育て環境作りの3本を柱として活動しています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
行政では手が届かない産後ケアを
産後ケアは行政による制度は作られてはいるものの、利用対象者が限定され、また申請主義のために運用が硬直化しています。現状では、情報が当事者に届かない、制度が利用者にとって利用しづらいなどの課題があります。そこで当団体では、産後ケアの利用や相談などを選択して使えるチケット制の「子育てクーポン」を行政に提案したり、本町の地域資源である温泉施設を活用した産後ケアの実施など、ソフト面での支援の充実を図りたいと考えています。
地域連携のプラットフォームづくりにもチャレンジ
これまで本町では、住民と行政が建設的に意見交換をすることを通じて、制度を改善しよりよく運用していくという機運が乏しかったといいます。学齢期以降の現状を見ても、過密状態の学童保育で管理が厳しくなっている、増える不登校児を受け入れる場所がないなど、様々な課題が発生しています。このような認識のもと、この間、町の子育て支援課や教育委員会との意見交換の機会をつくり、行政との対話にも力を入れています。
同時に、NPO、地域住民、企業・事業者、議員、行政の方等、様々なステークホルダーが連携して、子ども・若者の支援、地域の課題解決に取り組める地域連携のプラットフォームづくりにもチャレンジしています。

◆団体ホームページ https://www.facebook.com/kosodatekupukupu
27.チャイルドラインおおいた(大分県)
◆団体の説明
「チャイルドライン」は18歳以下の子どもの行きどころのない気持ちや、さびしさ、深刻な悩み話などを聴く活動です。どんな話、気持でもまずは受けとめることからはじめて、子どもをひとりの人間として尊重し、話を聴いていくなかで、できることを一緒に考えていきます。話を聴いてもらうことで、自分への理解者がいると感じてもらい、一人でも多くの子どもの気持ちが軽くなるよう話に耳を傾けます。安心できる “こころの居場所” をめざしています。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
「子どもを誰一人取り残さない社会の実現」、「こどもまんなか社会の実現」など、子どもの生きやすい社会をつくることを目指した活動に取り組んでいる。
また「子どもの権利条約」がまだ社会に浸透していない状況で、しかも学校でも教えていない。学校の先生教職員の理解不足という地域社会のなかで、子どもの声を受け止め安心できる居場所の創造もあわせて取り組む。
●子どもの自己肯定感を高める目的の児童クラブ等へのアウトリーチ
チャイルドラインを知ってもらうカード配布などの広報活動。子どもを見守る大人を増やすための講座開催。相談所「ままのほけんしつ」の開設など。
●行政、教育委員会等へ会報誌配布と担当者コミュニケーション
●チャイルドライン公開講座等での意見交換の場
以上のことで何かしら不安を抱えている子どもたちを地域で守り、地域で見守る大人を増やしていくこと(包摂、参画)に貢献する。

◆団体ホームページ
https://childlineoita.littlestar.jp/
28.NPO法人 Teto Company(大分県)
◆団体の説明
人が人として生きていくことを奪われない社会づくり
法人ビジョン“ひとりぼっちをつくらない地域・社会をつくる。”ことから、大分県竹田市で幼児小学生から高齢者まで集まれる地域コミュニティ施設を2か所運営している。
地域の中でヒトとヒトが繋がるきっかけをつくり、助け合い・支え合いが生まれる地域、多様性を認め合う地域づくりを目指すとともに、どのような家庭背景や環境・理由があったとしても、年齢や立場に関係なく「人が人として生きていくことを奪われない社会」づくりを目指している。
◆SDGsから見た団体の価値~こんな価値生み出しています~
地域フラットな居場所「みんなのいえカラフル」
『多様性』『地域共生社会』『インクルーシブ地域』をテーマに、福祉事業(共生型デイサービスを視野に入れた児童発達支援・放課後等デイサービス等)や地域の中にある社会課題の解決に向けて行動するプロジェクトを展開。福祉や教育の現場で課題と考えられている、
1.支援/介護される側・支援/介護する側がはっきりわかれており、上下関係が生まれることで本人の主体性や能力を奪う可能性がある。
2.福祉サービスに任せすぎることで、地域との繋がりや助け合い・支え合いが希薄になっている。
3.縦割りの福祉制度により、多様性を知る機会の損失になっていることが差別や偏見を生みやすくしている。
などに対して、地域フラットな居場所「みんなのいえカラフル」を立ち上げて、”孤立している方が他者と繋がる場”、”多様性を知り合う場”、”支え合い・助け合いの場”などとしての役割を担い、地域包括センターや学校など地域の連携も行っている。

◆団体ホームページ
https://syncable.biz/associate/colorful