【SDGs Blog】原爆の日に考える平和、核廃絶、そしてSDGs

正会員団体のピースボートで国際コーディネーターを務められているメリ・ジョイスさんに「平和と公正をすべての人に」という持続可能な開発目標(SDGs)のゴール16について考えるエッセイ「原爆の日に考える平和、核廃絶、そしてSDGs」を寄稿いただきました。

 

今から76年前の8月6日と8月9日、広島と長崎に原爆が投下されました。その日の悲惨な体験を世界に伝え、核兵器廃絶を訴え続けている被爆者の平均年齢は84歳に迫りました。テレビや新聞でも多く取り上げられ、多くの人にとって8月は「平和」について考える時期ではないでしょうか。


「平和と公正をすべての人に」という持続可能な開発目標(SDGs)のゴール16には、暴力の減少、犯罪の撲滅などをめざすターゲットが設けられています。直接的に核兵器には触れていませんが、実は、SDGsと核の問題は深く関連しています。


故意的であっても事故や誤算による使用でも、ひとたび核兵器が使用されれば、広島と長崎で投下された原爆と同様、壊滅的な人道的影響が生じ、あらゆるSDGsの達成を脅かすことになります。SDGsが採択されてから2年後にあたる2017年に、国連で採択された「核兵器禁止条約」は、核兵器を禁止し、廃絶をめざすことで、SDGsの実施を強化することに貢献しています。条約が作られた背景には、核兵器を国家間の安全保障の問題としてだけでなく、人間の安全保障を中心とした「人道アプローチ」に焦点が当てられたことがあります。


議論のシフトを実現させたのは広島・長崎の原爆、そして世界各地で核実験の被害に遭った「グローバルヒバクシャ」の方々の力強い訴えでした。ピースボートが国際運営委員をつとめる「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が2017年のノーベル平和賞に選ばれた理由も、「核兵器がもたらす破滅的な人道上の結末への注目を集め、核兵器を条約によって禁止するための革新的な努力をしてきたこと」が評価されたからです[1]。


米中などの核保有国の間で緊張が高まっている現在、核兵器の近代化、そしてその使用の可能性が高まっています。核兵器が存在し続けることは、平和に対する明らかな脅威です。また、SDG16のみならず、飢餓や貧困、健康と福祉、気候変動、食の安全、海や陸の豊かさなど、他の目標にももちろん大きく影響します。この問題を通して、17の目標がいかに相互的に関係しているかが分かります。核兵器とSDGsこれらの関係については、ICANが説明資料を発表しています(英語)[2]。

現在、新型コロナウィルスによるパンデミックとの闘いが世界的に続いています。人々は自由に移動ができず、途上国のワクチンへの公正なアクセスも、まだ確保できていないという困難な状況が続いています。にもかかわらず、ICANの調査[3]によると、世界の核保有国が昨年、核兵器に支出した予算は総額726億ドル(約8兆円)に及びました。日本の2020年度の防衛費も、過去最大の5.3兆円でした。


仮にその2割を新型コロナウィルス対策に充てられたら、何ができるでしょうか。ピースボート/ICANの川崎哲によると、「日本で年間1.1兆円あれば、集中治療室のベッドを15,000床整備し、人工呼吸器を2万台そろえ、さらに、看護師7万人と医師1万人の給与をまかなうこと」ができるといいます[4]。日本でも国際的にもワクチン、医療従事者のための個人防護具などがまだ不足していますが、この資金を、使うことのできない兵器のためではなく、SDGs達成のために使えれば、どれだけの命を救い、状況を改善することができるでしょうか?