【SDGs Blog】行政の「社会的責任」調達で、地域と地球の持続可能性を高める!
SDGsジャパンの事業統括ユニットのひとつ、社会的責任ユニットの幹事団体である、人と組織と地球のための国際研究所(IIHOE)の川北 秀人さんにエッセイ「行政の「社会的責任」調達で、地域と地球の持続可能性を高める!」を寄稿いただきました。
※本エッセイは8月4日に発行されたメールマガジン「未来コトハジメNEWS」の巻頭コラム「ミラコト・サロン」に寄稿された原稿を加筆修正いただきました。
※社会的責任ユニットは、あらゆる組織が社会的責任と信頼を向上させるとともに、マルチステークホルダー・プロセスで課題解決をすることを推進する「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク(NNネット)」を運営母体として活動しています。
SDGsのゴール12(生産・消費:つくる責任・つかう責任)には、世界経済の大きな割合を占める、とても規模の大きな項目が織り込まれています。ターゲット12.7「国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する」です。
公共調達とは、行政が資材やサービスなどを購入すること。土木・建設や医療・福祉・教育などあらゆる分野で、工事から文具まで、また、施設の指定管理やイベントや広報などの委託や、地域の団体への助成・補助まで、広範かつ多様な項目に及びます。
すでに企業の調達において、環境や人権への配慮・対応を求める動きは、20世紀末から着実に進み、世界を市場とする企業にとって、CSR調達は、事業を存続させ拡大する上で、対応が必須の項目となっています。
一方、世界規模の企業以上に、地域における私たちのくらしに大きな影響を及ぼすのが、行政による調達です。国や地域によっては、「最大の事業者・雇用主」が行政であることは珍しくありません。主要国のGDPに占める公共調達(政府予算全体のうち、人件費・扶助費・公債費などを除いた調達額)の比率は2割程度であり、2021年の世界のGDP96兆USドル(IMF)のうち公共調達は約20兆USドル(2700兆円)、日本でも538兆円(2020年、内閣府)のGDPのうち約100兆円に達すると見込まれます。さらに、市区町村行政の支出(歳出)を見ると、職員や議員などの「人件費」、生活困窮者の支援や子どもの医療費無料化などに充てる「扶助費」、そして、地方債の返済や利息の支払いである「公債費」の3項目(いわゆる「義務的経費」)が歳出総額に占める比率は、例年であれば5割弱。裏返せば、地方自治の現場は、歳出の半分以上を投じて、資材やサービスを外部から購入して営まれています。
EUでは2004年から「イノベーション戦略」として公共調達に関する指令を相次いで制定し、ライフサイクルコストへの配慮を義務付けるなど、評価基準も明確に示しています。しかし日本では、グリーン購入法(2000年)や障害者優先調達法(2013年)などの個別法は制定され、単に値段が安いだけでなく、他の項目での加点も認める「総合評価方式」も一部には取り入れられている(※注)ものの、会計法(1947年)や地方財政法(1948年)の「必要かつ最低の限度」という条文が優先され、とにかく安く入札したところに発注する、という状況が続いています。また、個別法も目標や推進計画が定められておらず、全省庁横断の推進体制もなく、どれぐらいの件数・額が購入され、環境や人権などにどのように寄与したかの定量的な把握もなされていません。このままでは、環境や人権、そして、地域の雇用や持続可能性の向上などに貢献した企業よりも、とにかく安さだけをアピールする企業だけが優遇されてしまう残念な状態が続いてしまいます。
NNネットでは、IIHOEを中心に、「公共調達における社会責任調達」の普及を働きかけるために、調査や提言などを続けています。
日本でも、国や自治体が、積極的に社会責任調達を進め、地域と地球の持続可能性を高める取り組みが進むよう、「社会責任公共調達」基本法や基本戦略、白書発行や対応促進交付金の設置などを、進める必要があります。最近の取り組みはホームページに掲載していますので、ぜひご覧ください。
※注:たとえば、市内住民の積極的雇用や市内企業との取引重視、本業以外の環境保全や地域ボランティアなどに取り組む企業を「地域貢献企業」に認定し、低利融資や入札時の加点などで優遇する、横浜市の「横浜型地域貢献企業」、第1条(目的)に「市が広範な事務事業を実施するに当たって,契約自由の原則の下で外部から多種多様なもの及びサービスを調達していることに鑑み、その調達の基本的な在り方を明確にすることにより、実施主体である市と調達の担い手である事業者が共に社会的責任を自覚し、もって市政及び地域社会の発展に寄与することを目的とする」と明記した、国分寺市の「公共調達条例」などがあります。
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