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国連SDGs自発的国家レビュー(VNR)市民社会・パレスチナ自治政府がイスラエルのSDGs自発的レビューを批判:「ジェノサイドに持続可能性はない」

ニューヨークの国連本部では、加盟国が「持続可能な開発目標」(SDGs)の進捗をレビューする「自発的国家レビュー」(VNR)が毎年7月に行われ、今年(2025年)も18日 ~23日の午後に開催されています。今回のVNRでは、複数の加盟国が同一セッション内で発表を行い、それに対して各国政府やステークホルダー(※)が質問を行い、各国が答弁するという形で実施されています。21日には6か国のVNRが行われ、その中でイスラエルはチェコおよびパプアニューギニアと同一のセッションでVNRを行いました。

(※)現在、市民社会、女性、若者・子ども、障害者など21の社会・経済・文化的グループが「メジャーグループとその他のステークホルダー」(MGoS)として認定され、公式な発言権を持っている。

 

イスラエルは以前から、ヨルダン川西岸やガザ地区を占領・封鎖し、土地の奪取や交通権の侵害、暴力や弾圧を繰り返し、これらの地域におけるパレスチナ人による開発を阻害してきました。特に2023年10月以降は、ガザ地区において過酷な戦争政策を遂行し、数万人以上を殺害、多くの人々が保健や教育などの基本的なサービスを受けることができなくなり、飢餓に瀕しています。イスラエルのVNRは、同国のこうした側面については触れることなく、整った保健システムやインフラ、デジタル等のイノベーション、生産性の高い農業、他国への開発援助などを自賛する内容でした。

 

これに対して、各国政府の質問がイスラエルの発表内容に沿ったものに終始した一方、上記のMGoSと、パレスチナ自治政府は異を唱え、イスラエルが進める人権抑圧と破壊、戦争政策を厳しく非難する発言を行いました。

 

MGoSは、イスラエルが行ったVNRについて、「ディストピアをのぞき込むような経験」と概括した上で、同国が、ユダヤ系の入植者たちを優越的に扱い、もともとこの地に住んでいたパレスチナ人を劣位に置くアパルトヘイト(人種隔離)体制を構築し、パレスチナ人の犠牲の上に、入植者たちのみが繁栄を享受する形で「開発」を推し進めていると指摘。デジタル技術を活用して、先住民たるパレスチナの人々に対して「持続可能なジェノサイド」を実践していると批判しました。

 

パレスチナ自治政府は、イスラエルのVNRについて、イスラエル政府が進めているアパルトヘイトやジェノサイド政策を、「持続可能な開発」や環境保護、水資源の保全、農業振興などといった美辞麗句によってウォッシュ(覆い隠)していると指摘。その上で、イスラエルがガザや周辺諸国等を対象に継続している空爆により、土壌・水・空気の深刻な汚染が生じており、「環境大虐殺」(エコサイド)をもたらしていることを批判しました。また、同国がVNRで自賛した農業の革新についても、(西岸やガザ地区の)パレスチナ人の農地を破壊し、飢餓をもたらす政策と軌を一にしていること、水資源の保全についても、水資源へのパレスチナの人々のアクセスを厳しく制限することで成り立っていると指摘。最後に、「ジェノサイドに持続可能性はなく、占領下に開発はなく、アパルトヘイトにイノベーションはない」と締めくくりました。

 

イスラエルは各国への答弁の枠において、MGoSやパレスチナ自治政府のコメントについて、色をなして非難。今後、イスラエルが国連に対して求める措置によっては、MGoS等の発言権の制限、ひいては市民社会の積極的な参画に制限がかかるのではないかと懸念されます。


 

<参考>

国連TV VNR中継

◎    イスラエルのVNR動画 1:39:30-1:41:52

◎    イスラエル政府の演説 1:41:53-1:52:23

◎    MGoSのコメント 2:02:35-2:04:48

◎    パレスチナ自治政府のコメント 2:07:08-2:09:11

◎    イスラエルの答弁 2:27:47-2:39:15


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