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「持続可能な開発報告書2023」に見る日本と世界のSDGsの進捗状況


6月21日、「持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)」は、その中心メンバーであるジェフリー・サックス/コロンビア大学教授をはじめとする複数の専門家たちによって執筆された、世界全体と各国のSDGsの達成状況を指数化し順位付けしている年次報告書持続可能な開発報告書(Sustainable Development Report)2023を発表しました。日本の順位は166カ国中21位(前年比-0.2点、2ランク低下)となり、11位だった過去最高の2017年以降、SDGs進捗は停滞傾向にあることが分かりました。



報告書の結果について、大橋正明・一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク共同代表は、「今年の報告書は、「2030アジェンダ」の中間年において、「SDGsの各目標は達成の道筋から大幅に外れている」という悲鳴で始まっている。日本に暮らす私たちにとっては、その悲痛な叫びを、どれだけ共感を持って受け止めることができるのかが大きな挑戦ではないだろうか」と述べています。


報告書は例年6月上旬に発行されますが、今年は6月22,23日にマクロン仏大統領の呼びかけで開催された「新グローバル金融協定のためのサミット」に合わせた発表となりました。本報告書はSDGsがその達成の軌道から大きく外れており、特に貧しい国々に向けて2025年までに相当の資金フローが必須であることを強く訴えている、という点でこのサミットと軌を一にしています。


全ての国々、つまり世界のSDGs達成指数の平均とその前年からの変化は、表1にあるように、2020年と2021年は66.8点、2022年は+0.4点と微増したものの、今回発表された2023年は66.7点(前年比-0.5点)となり、2020年以前の状態に後退しました。


報告書で使用されている統計データは、発表年の前年のものを主に使用しているため、2023年報告書は、主に2022年時点の世界のSDGsの進捗状況を示しています。この報告書は、世界全体でのSDGの進捗状況は、新型コロナウイルス感染症による世界的パンデミックが起きた2020年から2022年にかけて、停滞あるいは後退していることを明示しています。


さらに、2022年2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻とそれによって引き起こされた食料不足や軍事費増大といった諸問題や、イエメンや南スーダン、シリアなど世界各地で続く紛争の影響も無視できません。紛争などが続く当事国の多くは、今回の報告書の国別順位のリストでも最下位に並んでいます。


報告書が示した特徴のもうひとつは、表2が示すように、SDGsの進捗の方向性は低所得国では大半が「停滞」か一部は「減少」の傾向が多いのと対照的に、高所得国のそれらは「順調」や「緩やかに上昇」、「停滞」の方向性が多いため、結果として高所得国と低所得国の間でのSDGs進捗状況の格差がさらに拡大したことです。これに伴い、気候変動に関するパリ協定の目標も達成できないことが指摘されています。


報告書は、SDGs達成に向けてこれまでのペースで進めると、2030年までに目標を達成することは不可能であることに強い危機感を表明しています(図1参照)。「続く未来」のためには、今まで以上のペースで取り組むことが求められています。


図2は世界の地域および所得別グループの評価を示しています。オセアニアや小島嶼国、サブサハラ以南アフリカで課題が顕著であり、また上で述べたように低所得国のSDGs達成度合いが低い傾向にあり、この状況は依然として改善できていません。


目標1(貧困)について世界をみると、先進国のOECD諸国の評価が「到達見込み」(緑)から「課題が残る」(黄)に後退し、東ヨーロッパと中央アジアも後退しました。世界全体の評価は「顕著な課題」(橙)であり、進捗の方向性は「停滞」、つまり改善が見込めていません。


その他に世界平均が「深刻な課題」(赤)を示しているのは、目標2(飢餓)、3(健康)、11(地域)、14(海)、15(陸)、16(平和と公正)です。生活や収入の基盤になる環境分野と、人々の生活そのものである食料と健康について深刻な課題が残るままではSDGsの達成への道のりは遠いものがあります。


 地域別のSDGsの進捗状況を見ると、日本を含めた東アジア地域は停滞傾向にあります。韓国は前年27位から31位に、中国は前年56位から63位と順位を下げています。ただし順位を下げたとはいえ、韓国は指数を+0.2点上昇させているので、日本の努力不足を指摘することも可能です。


日本の達成状況を見ると、最低評価の「深刻な課題」(赤)となった目標は、前年より1つ減少して5つでした。昨年から変わらず最低評価だったのは、「ジェンダー平等」(目標5)、「つくる責任、つかう責任」(同12)、「気候変動対策」(同13)、「海の環境保全」(同14)、「陸の環境保全」(同15)が「深刻な課題がある」と評価されました。最低評価から「重要な課題がある」にひとつ評価を挙げたのは、「パートナーシップ推進」(同17)となりました。進捗の方向性は、目標2、3、4、8、9、13、16で前年より評価が下がっています(図3、表3)。




一方で、他国のSDGs達成への波及効果を示す日本のスピルオーバー値は昨年の67.3から72.2に上昇しました。この指標は、他国へ波及する影響を貿易、経済・金融、安全保障の3つの側面から評価しています。スコアが高いほどより多くのプラスの波及効果をもたらすことを示しており、日本が他国へ与える影響が好転したといえます。ただこのスピルオーバー値も、OECD平均の73.8に及んでおらず、韓国や中国より劣っています。この指標では、例えば、輸入におけるCO2排出量や、廃プラスチックの輸出量が多いことが示されています。


報告書についてコメント(SDGsジャパン共同代表理事 大橋正明)

これまでの報告書は、SDGs達成が遅れていることやコロナでその進捗が逆行しはじめたことが強調点だったが、「2030アジェンダ」の中間年である今年の報告書は、「SDGsの各目標は達成への道筋から大幅に外れている」という悲鳴で始まっている。日本に暮らす私たちにとっては、その悲痛な叫びを、どれだけ共感を持って受け止めることができるのかが、大きな挑戦ではないだろうか。

 また日本のSDGs進捗の評価がこのように芳しくないことを、コロナのせいだとするのは、早計だ。SDGs上位国や韓国では、評価指標の点を上昇させているからだ。日本全体として、SDGsにもっと喫緊に取り組むことが求められている。



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