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[開催報告]SDGs市民カレッジ2023

10月21日、SDGsジャパンでは、「SDGs市民カレッジ2023」を開講、「貧困・格差」をテーマに、現場で活動しているNGOスタッフを講師に迎え、学びを深めました。



当日プログラム

司会進行:星野智子


10:00 趣旨説明・チェックイン 

10:20 ①講義「LNOB/世界の貧困~開発と貧困を捉え直す~」

大橋正明 SDGsジャパン共同代表

11:00 ②ディスカッション1

モデレーター:長島美紀 SDGsジャパン理事

1.情報を受けた感想と質問

2.貧困・格差が広がる原因と背景について議論

11:30 ランチタイム&移動

12:30 ③エクスカーション

15:00  終了&移動・休憩

15:30 ④情報提供1

「国内の子どもの貧困問題の現状と解決への糸口~経済的に困難な状況にある子どもたちへの支援活動から~」

鳥塚早葵さん 公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部 

15:50 ⑤情報提供2

「貧困、孤独・孤立対策の現況と課題~参与として政策立案に関わって~」

大西 連さん 特定非営利活動法人自立生活サポートセンターもやい理事長

16:10 ⑥ディスカッション2 

モデレーター:新田英理子 SDGsジャパン理事・事務局長

「貧困・格差解消のための次の一手や新たな発見に向けて」

17:00 ⑦ラップアップ

17:30 終了・撤収

 

①基調講演 テーマ:「LNOB/世界の貧困~開発と貧困を捉えなおす~」 

大橋正明氏

SDGsゴール1は、あらゆる場所、あらゆる形態の貧困に終止符を打つことを目標としています。あらゆる形態とは、個人や属性、地域、民族などを指し、このあらゆる形態という部分が重要なポイントです。


相対的貧困は、絶対的貧困に比べ見た目では分かりづらいことが特徴です。2021年の日本の相対的貧困率は、先進国では最悪となっています。貧しい中でも救える層がいる一方で、そうでない層はより貧しくなっており、貧困層の中でも格差が拡大しています。


オックスファムの報告によれば、2020年以降に世界で生まれた富の3分の2を上位1%の人々が手に入れたと推定されています。コロナのワクチンや治療薬に係る先進国の製薬会社による知的財産権の問題もあり、2020年以降、グローバルな不平等が加速しています。


日本政府は、ゴール1-1のデータについては収集をしていない、1-2の各国定義については、定義がないとしています。実態としては生活保護水準等がデータとして使用できるのではないかと思います。日本政府として、日本の貧困の実態をきちんと把握することは先進国としての役割であり、責任であるのではないでしょうか。


②ディスカッション及び質問

貧困対策は政府がとるべきなのか、それともNPOが担うべきであるのかという議論があり、社会全体としての制度や仕組みに関しては政府が取り組み、個々の事例はNPOが丁寧に対応することの重要性が指摘されました。その上で、貧困は人権の問題であるにも関わらず、貧困に陥るのは個人の問題であると捉えられてしまうこと自体が問題であること、政府が人権の問題として取り組んでいく必要性も議論しました。


また、講師から、貧困に関する統計に関しては、日本政府は限外を意識した定義をしてデータを取得し、世界に日本の実態を示す責務があるとの指摘がありました。一方で、NPOやNGOがエビデンスベースの統計データを取得することは費用面や人材面から難しいという意見に対し、講師から、参加型調査の実施が可能であるとの助言がありました。戦後の経済復興の中、陰にあった人権の問題が今日社会問題となり議論されるようになったように、貧困の現状を影響力のあるマスコミが取り上げて社会で議論されるようになることが大切であるという意見もありました。政府、メディア、市民社会が、それぞれの立場で貧困の問題に真剣に取り組む必要性を認識しました。


③エクスカーション

自立生活サポートセンター・もやいと新宿ごはんプラスという団体が東京都庁下(会場から歩いて数分)で毎週土曜日に行っている食料品配布と相談会の活動現場に行き、現場視察、ボランティア体験を行いました。会場にて大西さんから説明を受け、現状について伺いました。


④情報提供1「国内の子どもの貧困問題の現状と解決への糸口~経済的に困難な状況にある子どもたちへの支援活動から~」 

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部 鳥塚早葵氏

貧困は子どもの権利に直結しています。相対的貧困ラインが127万円で日本に住む人全体の相対的貧困率は15.4%という現実の中、ひとり親家庭の相対的貧困率は44.5%と高く、社会的な課題として浮き彫りになっています。


セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが実施した中高生へのアンケート結果では、40.9%が生活が大変苦しいと回答し、61.2%が「家族のことなどで困っていることや心配なことはありますか」という質問に、「家にお金がない(少ない)」と回答しました。その中には、「もう少しご飯が食べたい」、「色々なことを我慢ばかりしている。全部お下がりばかり。」といった状況に直面している声も挙がっています。つまり、お金がないこと(相対的貧困)が、さまざまな子どもの権利侵害につながっているのです。


参考サイト:


セーブ・ザ・チルドレンでは、0~18歳までの子どもの育ち・学び・意見表明をサポートしながら、経済的に困窮している世帯や生活上の困難がある子どもたちに対しての支援を行っています。子どもの権利の保障は、一義的には国が義務履行者として義務を果たすことが求められますが、自治体・学校・教育機関やNGO/NPOなども加わり、社会全体として子どもの貧困の解消に向けて取り組んでいく必要があります。



<参加者からの質問>

(参加者)子どもの権利という立ち返れる場所があるのは良いと思いました。自分が大学に入学した際は、世界人権宣言への署名が必要だったのですが、それによって人々が同じ方向を向いて議論ができるようになるため、とても重要なことだと考えています。一方で、権利について共有することはとても難しく、セーブ・ザ・チルドレンではどのように子どもの権利の理念を広めているのでしょうか?


(鳥塚)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン設立当初、日本国内では子どもの権利についての教育事業から始めました。最近では3万人ほどを対象にしたアンケート調査を実施しましたが、日本の実態として、子どもの権利について知らない人がほとんどでした。団体内で社会啓発に取り組んでいるチームでは、子どもの権利教材を開発し、それを用いて学校で出前授業を実施していますが、例えば担任の先生として権利教育へのやる気があっても、その上の管理職を通さなければならなかったりと、権利教育を普及させる上でさまざまな難しさも感じています。まだ十分にできていない部分もたくさんありますが、今はこども家庭庁やこども基本法もでき、社会としての気運も高まっているので、権利教材をもって文科省などにも働きかけを行っています。


⑤情報提供2「貧困、孤独・孤立対策の現状と課題~参与として政策立案に関わって~」 

特定非営利活動法人自立生活サポートセンターもやい理事長 大西連氏

貧困は外部環境に大きく左右され、政府の「貧困」政策が半減を目指しているものの、その中身や本気度は不透明です。自立生活サポートセンターもやいは、食糧支援の他にも相談事業や住まいの支援を行っており、約2,400世帯の連帯保証人、1,300世帯の緊急連絡先を引き受けています。野宿の方が減少している一方で、DV被害者や精神病院から退院した方、シングルマザー、外国ルーツなど、多様な背景を持つ人々が支援を求めています。貧困は複雑で、必ずしも失業、「住まい喪失=貧困」というわけではなく、若年層や、雇用と要保護を行き来されている方もいます。一方で、客観的に多いのは非正規雇用の層で、まじめに働いていても賃金が高くならないなど、社会構造としての貧困問題があり、その問題は表面からは見えてきにくいです。働いても暮らしが楽にならないのは、先進国ならではの問題と言えるかもしれません。


貧困だけでなく、孤独や孤立も社会問題と位置付けられます。国の調査によれば、4割の人が孤独を抱え、孤立している状況にあります。一方で、それらの方が国やNGO/NPOから支援を受けているかというと、支援を受けていない人が9割で、ほとんど相談しない実態が明らかになっています。NGO/NPOの共助的な活動は、社会のつながりを作り、社会の免疫力を高める手段だと考えています。


こうした状況を改善するために、政府に対しては、法律の制定や地域活動の応援、NPO民間団体・自治体協議の場の設置、DX推進などを求めています。また、官民連携の強化や、SDG17のパートナーシップの推進がより重要であると考えます。


⑥ディスカッション2

(参加者)政策提言する際、貧困支援の財源については、どのようなアプローチで政策決定者とコミュニケーションをしているのでしょうか? 


(大西)脆弱的な立場の人への支援は、コストに対しての効果が高いとは決して言いきれません。例えば防衛費のように、世論が高まれば財源がついてきてしまうケースもあります。国の仕組みに乗っかる必要はありますが、社会の多くの人に「これが必要」だと思ってもらう必要があります。そうすればメディアの報じ方も変わり、政治家もそれに対して敏感になると思います。今は子ども支援が盛り上がっているように、政治的な思想よりも、世論形成が大事だと感じています。


(参加者)EUは社会的排除指数を貧困政策パッケージに並べて出していますが、日本はある程度生活困窮者支援が独立しているのはどうしてでしょうか?


(大西)日本において、生活困窮者支援と社会的排除に関する議論が別々の文脈で進んでいる理由には歴史的背景と社会制度の特徴が影響しています。生活保護制度は1947年に導入され、その後も法律が進化しています。一方で、社会的排除や孤立といった概念は、比較的最近の時期に注目されるようになりました。このため、それぞれが異なるコンセプトとして扱われてきたと言えます。


⑦ラップアップ

<新田>

市民社会として、権利というものをどう捉え直すか問いかけられています。近年、ビジネスと人権の問題がより注目を浴びるようになってきていますが、人権への意識が成熟しだしてきている兆しかもしれません。我々が取り組んでいる問題も、ビジネスの文脈にアップデートしていく必要があるのかもしれません。


<大橋>

大人や子どもの貧困が増えてきている中、権利の議論が表層的になっているとも感じています。女性の非正規雇用やシングルマザーの貧困など、まだ多くの点で権利の実現には至っておらず、権利意識が広がっても、状況は自動的には良くなりません。権利もSDGsも、お経のようにただ振りかざしているだけでは解釈の仕方によって問題がすり替えられてしまいます。根本的な課題が何か、世の中がなぜサスティナブルではなくなったのかについて、SDGsの中には書かれていません。それは診療していないのに薬を処方するようなもので、権利やSDGsという言葉が独り歩きしないように、僕らの発想もより明確に言語化し、リアリティを持って人々に感じさせる必要があります。



本イベントは地球環境基金の助成を受けて運営されました。



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