三輪敦子共同代表理事より2023年新年のご挨拶
新しい年、どのように迎えられたでしょうか。
1.2023年のSDGs
2023年はSDGsにとって、とても重要な年です。達成期限の2030年に向けた折り返し地点であり、採択後の7年間の進捗を検証し、2030年までの課題を検討して、4年ぶりに「持続可能な開発に関するグローバル・レポート(Global Sustainable Development Report: GSDR)」が発表され、首脳クラスが参加する「SDGサミット」が開催されます。
気候危機の悪化、新型コロナウイルス感染症、ウクライナ危機により、SDGsを取り巻く状況はすっかり変わってしまいました。多くの目標で、少しずつ積み上げてきた進展が帳消しになり、貧困、飢餓、格差の拡大が懸念されています。特に女性と少女への影響が深刻です。SDGs達成のための軌道修正をおこない、どう行動に移せるか、まさに正念場です。
2023年には、また、日本政府の最上位政策であるSDGs実施指針の改定が予定されています。昨年は、実施指針改定に向けて日本の課題を洗い出し、課題を解決するためのターゲットや指標を検討することを目的として、2回にわたり外務省と政府SDGs推進円卓会議によりパートナーシップ会議が開催されました。このプロセスでは、日本に必要なターゲットと指標案に関し、SDGsジャパンの各ユニットの皆様に大変ご尽力いただきました。
今後、パブリックコメントを経て実施指針案が確定する予定です。2030年のSDGs達成を展望できる実施指針が策定されるためには、脆弱性を抱え周縁化されがちな多様な当事者と当事者を支援してきた市民社会組織の声が反映されることが決定的に重要です。そのための様々な機会をつくれるよう、SDGsジャパンは尽力してまいります。皆様の積極的なご参加をよろしくお願いいたします。
2.SDGsと平和
SDGsは完璧な処方箋ではありませんが、2022年は、その不備が露わになった年でした。平和に関しては目標16「平和と公正をすべての人に」がありますが、ターゲットと指標には武力紛争、軍縮、核廃絶等の課題は一切、含まれていません。
ウクライナ危機によって私たちが理解したのは、平和が持続可能な環境、経済、社会、すなわちSDGsの前提であり基盤であるということです。これまでも絶えることがなかった様々な地域の武力紛争や内戦に対して、国際社会が十分に対応してこなかったことも改めて突きつけられています。
ロシアによるウクライナ侵攻後、私が最も心を打たれたのは、テレビでインタビューに答えていたウクライナの保育士さんの以下のような言葉です。
「勝つか負けるかなんて、どっちでもいい。 目の前の子どもたちが泣かずに笑顔で過ごせるなら。」
この言葉はナイーブ過ぎて、国際関係においては誰の耳にも届かない、誰の心も動かさない言葉でしょうか。しかし戦争がSDGsという概念そのものを破壊する愚挙であることが明らかであるならば、この言葉を世界のコンセンサスにするための勇気こそが求められていると思います。こうした声が世界を変える力にならない限り、SDGsには手が届かないのではないでしょうか。
ガンジーは以下のように言いました。
世界の運命を暴力によって蹂躙させない唯一の方法は、私たち一人ひとりがあらゆる暴力を肯定しないことである。
今、改めて、「非暴力」の思想と実践が求められていると思います。
3.「誰一人取り残さない」ことをあきらめずに叡智を集めて未来をつくる
未来から過去を振り返った時に、2023年が第二次世界大戦の次の大戦につながることになった年だったと記憶されないために、そして危機を乗り越えて平和への希望が拓けた年だったと記憶されるために、大胆な変革を恐れずに未来をつくる努力が必要です。ガンジーが言うように「善いことはカタツムリの速度でしか動かない」かもしれませんが、あきらめずに叡智を集め、そしてカタツムリの速さであっても歩みを止めないためには一人でないことが大切です。
一人じゃないのは最強です。志を共有する人たちの存在が、私たちを支え、励まし、前に進むエネルギーとなり、パッションを新たにさせてくれます。「みんながみんなのアライになる」ことの重要性も理解できます。そのためのハブの1つにSDGsジャパンがなることができればと思います。今年も、皆さんと一緒に豊かで平和で公正で持続可能な未来をつくるために共に歩んでいきます。今年も、どうかよろしくお願い申し上げます。
三輪敦子
一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク共同代表理事
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